「日本企業で働き続ければよかった…」 努力しても報われない《ブラック化する中国企業》で働く中国人の本音
返信だけでなく、経営判断も遅いと感じる。首都圏だけでなく地方にも営業し、派遣先を開拓してほしいのに、本社は「営業スタッフが足りなくて」と腰を上げない。
「日本の人手不足は中国の同業者も知っています。中国企業は即断即決で日本に進出し、一秒を惜しんで市場を開拓しているのに」と彭さんは歯噛みする。
日本本社と中国支社の“温度差”がとりわけ顕著になったのは、今年1月の仕事始めだ。中国支社は中国の暦に合わせて1月2日から通常通り仕事をしていたが、1月6日が日本本社の仕事始めなので、午前に全員オフィスに集まりオンラインで全体会議に参加する予定だった。
が、日本本社で同日出社する人がまばらだという理由で、全体会議は1月の3連休明けに延期された。
「日本は年末年始に9連休もあったのに、すぐ3連休が控えているからって1月7、8日もまだ休みモードでした。当社の中国支社は日本式で規律や節目を大事にしていましたが、緩くなる一方の日本に合わせていると、こちらの効率が落ちてしまいます」
4月初めにも新年度の全体会議があったが、中国支社側は参加しないことにした。咎められたら「中国は4月始まりじゃないので」と答えるつもりだったが、理由も聞かれず承認された。
日本の働き方改革で一変
「日本人が前ほど働かなくなった。なぜだ」
日本企業と取引のある中国人から聞かれるたび、筆者は「人手不足」「働き方改革」に言及し説明してきた。
10~15年前、中国人から見た日本人労働者のイメージは「勤勉」、ともすれば「ワーカーホリック」で、日本企業は「長時間労働」「残業」「飲み会も仕事」との印象を強く持たれていた。一方、中国は社会主義、個人主義、属人主義が入り混じり、「ほどほどに働く」人が大半だった。
2010年代に中国に駐在した日本の大手物流企業の社員(50代)は、「定時になると(中国人の)アシスタントがさっさと帰るから、残業したくてもできなくて、自分も定時で帰らざるをえなかった」と話していた。
しかし人手不足を背景に日本企業は働きやすい環境に力を入れるようになり、状況は大きく変わった。夜間や休日の業務を指示したり、返信を求めるのは、パワハラとみなされるようにもなった。
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