「日本企業で働き続ければよかった…」 努力しても報われない《ブラック化する中国企業》で働く中国人の本音

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前述の彭さんに「日本本社から返信が滞るのは、職場の人手不足もあるのではないか」と伝えると、「在宅勤務も大きな理由だと思います」と返ってきた。

「コロナ禍をきっかけに日本本社は在宅勤務を導入しましたが、それでスタッフ間の連携が悪くなったように感じます。中国は(メッセージアプリの)WeChatで気軽にやり取りする文化がありますが、日本人はプライバシー意識が高いからか、在宅勤務中のスタッフの様子がわからず、あちこちで業務が滞っているのではないですか?」

昭和化する中国企業

日本人が「働かなくなった」間に、中国人は以前より根を詰めて仕事をするようになった。

2018年から2019年にかけて流行語になったのが「午前9時から午後9時まで週6日仕事する」ブラックな仕事環境を指す「996」だ。

ただ、この頃はIT企業が牽引する形で民営企業が急成長を続け、激務の対価として得られるものが多かった。20~30代でボーナスが数千万円という景気のいい話も飛び交い、成長を求めて競争に飛び込む若者も少なくなかった。

中国 働き方改革
上海にあるファーウェイの研究施設。同社は中国でも長時間労働で知られる一方、破格の待遇で高度人材を引き付けている(写真:筆者撮影)

2019年に日本企業から中国企業に転職した薛雪さん(仮名、36)もその一人だったが、今は「日本企業で働き続けていればよかった」と後悔している。

中国の大学院を修了した薛さんは2016年に来日した。当時は日本の大企業でダイバーシティ推進の機運が高まり、北京や上海で日本企業による合同説明会も開かれるようになった。

大学院で日本語を学んでいた薛さんは、その波に乗って日本の大手小売企業に就職した。

最初は東京の店舗に配属され、入社3年目に本社の人事部門に異動した。仕事に大きな不満はなかったが、学生時代の友人が転職でステップアップするのを見て、焦りを感じるようになった。

「日本語専攻の学生たちの間では、日本企業の残業の多さや昇進の遅さはよく知られていました。だから上昇志向の強い中国人は、新卒で日系企業に入社してもそこを踏み台に、欧米企業に転職します。さらに中国のIT企業が成長し、ゲームやアニメ、ECなどの日本関係のローカライゼーションの仕事も増え、仕事の選択肢が増えました。中国のIT企業に転職した同級生に給料で抜かれ、日本企業にいたら成長できないと思うようになりました」

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