窪塚洋介のペコや、井浦新のスマイル…2000年代の映画「ピンポン」に今でも激アツになる理由

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今では、このキャスティング以外では『ピンポン』の配役は考えられないくらい、全員がハマり役と言っても過言ではないだろう。

この頃の窪塚洋介は、2000年に放送された『池袋ウエストゲートパーク』のキング役で注目され、『GO』『Laundry』と続けて主演を務め、人気俳優の階段を着実に上っていた。

そして井浦新も、窪塚洋介と同様に注目されていた。現在では、俳優としてドラマや映画で引っ張りだこの井浦新(当時はARATA名義)だが、ちょうどモデルから俳優業へと活躍の場を広げていたときだった。

井浦新も当時からスクリーンでの存在感は充分に発揮しており、『ピンポン』では瑞々しさがある演技で観客の心を掴んだ。

日本アカデミー賞など数々の賞を受賞

また、意外にも中村獅童は、本作が映画デビュー作である。このドラゴン役を射止めるために、眉毛を剃りスキンヘッドにしてオーディションに挑んだという。

俳優たちの作品に込めた思いは観客にも伝わり、中村獅童は日本アカデミー賞など各新人賞で5冠を受賞した。

『ピンポン』のヴィジュアルが公開されたときは、キャスティングや見た目のインパクトに皆が驚き、ヴィジュアルのほうが話題になったが、ただ原作のキャラクターに見た目を「似せる」だけではない演技力から、観客たちは彼らのこれからの活躍が期待できるような可能性を感じたのではないだろうか。

『ピンポン』を語るときには、ペコとスマイルの卓球と向き合う姿に目を向けられるが、それだけではない。

作中に登場するドラゴンや、大倉孝二が演じるアクマにも共感した人は多いのでないだろうか。

ペコとスマイルと幼馴染のアクマは、小学生の頃から同じ卓球道場の出身であり、アクマは血の滲むような努力の末、卓球の名門校・海王学園に進んだ。

そして、かつて自分が見下していたスマイルに非公式に勝負を挑んだものの、見事に惨敗。この事がきっかけで卓球部を退部し、ヤケになり傷害事件を起こして高校を中退してしまう。

また、ペコに「卓球の権化」とも称されるドラゴンも、表面上では威風堂々と皆を牽引していても、試合前はトイレにこもるくらい「無敗」という大きなプレッシャーと闘っていた。

『ピンポン』は卓球の青春物語である一方で、人生哲学のような側面を併せ持つ。最初から才能に恵まれている者、優秀さで評価される者、プレッシャーに立ち向かう者、努力が実らなかった者……。

各キャラクターそれぞれに共感でき、自分と重なるところがあるからこそ、観客たちはこの映画に胸を打たれるのだ。

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