人気再沸騰の温泉街「熱海」、駅開業100年の軌跡 当時の設計図に見る「貴賓室」もあった豪華駅舎
熱海駅が開業したのは、冒頭でも述べたように1925年。2032年に大船―藤沢間に村岡新駅(仮称)が開業予定だが、JR東日本管内の東海道線の駅としては、熱海駅以来107年ぶりの新駅となるという。熱海駅は最も「新しい」駅なのだ。著名な温泉街の玄関口である熱海駅の開業時期が遅かったのには、次のような理由がある。

東海道線が横浜から国府津まで延伸されたのが1887年。さらに国府津から先は、広く知られているように「天下の険」である箱根を迂回するために現在の御殿場線(国府津―御殿場―沼津間)経由で延伸された。
ここで問題になったのが、江戸時代に東海道五十三次の江戸から9番目の宿場町として栄えた小田原や、古くから温泉地として知られていた熱海が鉄道ルートから外れたことだった。
熱海初の鉄道は「人力」だった
まず、街の衰退が危惧された小田原では地元の有力者らによって鉄道敷設の機運が高まり、1888年に国府津―小田原―箱根湯本間を結ぶ小田原馬車鉄道が開業。この馬車鉄道は後に電化されて小田原電気鉄道となり、さらに関東大震災後に経営資本が変わり、箱根登山鉄道軌道線(路面電車)となる。
熱海でも同じように鉄道熱が高まり、「軽便鉄道王」として知られた雨宮敬次郎が中心となって、豆相人車鉄道を計画。小田原馬車鉄道の途中駅だった早川口(小田原城趾公園の南西に位置)から分岐し、根府川、真鶴、吉浜、湯河原、伊豆山の主に海岸線をぬうように走り、熱海までを結ぶ路線で、1895年に熱海―吉浜間、翌年に小田原(早川口)までの全通を果たした。

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