「2度目のW杯切符」森保監督は何がスゴいのか? ベテランサッカー記者が見た"マネジメントの妙"
長友はそこから一度も試合に出ていない。9月の北中米W杯最終予選突入後はベンチ外が続いている。それでも長友は「試合前日に毎回、森保監督が自分たちメンバー外の選手のところに来て、『申し訳ない』と言うんです。そんな監督は今まで見たことがない」と言う。
監督からリスペクトされ、大切に扱われれば、選手も全力を尽くそうという気持ちにもなる。前述のように、不要だと思えば非情に切り捨てるが、必要だと考えているときは誠心誠意、選手に歩み寄る。そのあたりのメリハリは森保監督ならではのアプローチと言っていい。

長友に続いて、2024年9月から現役を引退したばかりの長谷部誠(フランクフルトU-21コーチ)を代表コーチに加えたことも画期的な出来事だ。長谷部コーチはまだ練習の1セッションを任されている程度。試合時はスタンドから全体を見て、選手個々にアドバイスをするくらいだが、世界基準やW杯の難しさを熟知する偉大なレジェンドを育てながら、チームの力にしているのだ。
森保監督としては、2030年、2034年と先々のW杯に挑む日本代表のことも視野に入れているからこそ、自ら日本サッカー協会に打診し、本人に内諾を得て、異例の人事を断行したに違いない。長谷部コーチを筆頭に現スタッフの中から未来の代表監督が出てくるかどうかは何とも言えないが、その先鞭をつけているのは確かだ。
残り1年で若手の育成を進められるか
こうしたマネジメントに加え、2024年6月からの3バック導入、欧州で結果を出していた小川航基(NECナイメヘン)や町田浩樹(サンジロワーズ)、中村敬斗(スタッド・ランス)、鈴木彩艶(パルマ)など新戦力抜擢もプラスに働き、日本は順当に8大会連続W杯出場を決めた。それは紛れもなく朗報だが、久保建英より年下の世代が育っていないという課題もある。
指揮官と7年間、苦楽を共にしてきた遠藤や堂安らの牙城を若手が崩すのは至難の業。けれども、世界を見渡せば、10代のタレントも出現している。その作業を今後1年間でどこまでできるのか。指揮官には難題が託される。
さらに付言すると、過去の日本代表は「最終予選で苦労したり、直前までゴタゴタしたチームのほうがW杯で結果を出す」という奇妙なジンクスがある。ここまで順調に来ている第2次森保ジャパンには予期せぬつまずきを強いられる可能性もあるのだ。
そういった困難を乗り切ったチームでなければ、史上初の8強入り、目標のW杯制覇にはたどり着けない。過去にない完成度と1年以上の準備期間というアドバンテージを大いに生かし、1年後の大成功へとつなげてほしいところだ。
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