「2度目のW杯切符」森保監督は何がスゴいのか? ベテランサッカー記者が見た"マネジメントの妙"

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「名波コーチは非常にアンテナが高く広くて、感度がいいですね。とくに攻撃面は彼を中心に練習を進めてもらっていますが、最初に『ボール保持にこだわりすぎる』という課題がすぐに修正され、よりゴールに結びつけられるようになっている。前田コーチもまだ経験は少ないですけど、前線で起点になる仕事、得点につながるディテールを落とし込んでくれている。2人の効果が徐々に出てきています」

森保監督は新体制始動直後にこう語ったことがあった。新たなコーチたちの発想やアイデアを生かしながら、チームの底上げを図っていこうとしたのである。

選手たちの考えや姿勢を最大限尊重し、聞き入れるという「ボトムアップ方式」を導入したのも特筆すべき点。もちろんすべて意見を聞き入れるわけではないし、自分の役割はしっかりと遂行しているが、その関係性が選手たちの自主性向上につながっているのは確かだ。

最たる例が、同年6月からキャプテンに指名した遠藤航(リバプール)が「北中米W杯優勝」を堂々と宣言したのを大いに歓迎したことだ。「私自身はそこまでは言えなかった。それだけ選手たちの基準が上がっているということ」と指揮官も神妙な面持ちで話したが、そこまで選手をリスペクトする指揮官はあまりいない。

持ち前のキャプテンシーでチームを牽引する遠藤航(写真:筆者撮影)

苦境を救ったベテランへの気遣い

こうした選手との関係構築の成果もあって、2023年は8勝1分1敗。9月には敵地・ヴォルフスブルクでの親善試合でドイツを立て続けに撃破した。

2002年日韓W杯でドイツ代表の参謀役を務めていた広島のミヒャエル・スキッベ監督も「まさにドイツは『負けるべくして負けた』と思いますし、日本の急成長を痛感しました。20年前の日本はそこまで伝統や確固たるスタイルを持たない国でしたが、逆にいろいろなものを吸収し、大きく進化を遂げることができた。今では世界トップに引けを取らない戦いができる国になったと思います」と、しみじみと話したほどだ。

だが、2024年に入ると、第2次森保ジャパン最初の苦難が訪れる。1〜2月のアジアカップ(カタール)でイラク、イランという中東の大国に立て続けに敗れ、8強止まりという不振に見舞われたのだ。

しかも、絶対的エースになっていた伊東純也の週刊誌スキャンダルが大会中に起き、チームを離脱。揺れ動く形になった。日本代表は遠藤や冨安を中心に選手が自発的に考えてアクションを起こせる集団になっていたはずだったが、予期せぬ壁にぶつかり、まだまだそうなり切れていない現実を突きつけられた。

そこで、森保監督が実行に移したのは、カタールW杯以降、代表招集を見送っていた長友を呼び戻すこと。つねに練習中から大声でチームを鼓舞し、闘争心を前面に押し出し、いざというときには若手をサポートできる大ベテランの重要性を指揮官自身、しみじみと痛感したからこそ、大胆なアクションを起こしたのだ。

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