マイナンバー、今さら聞けない基本中の基本 戦後最大の制度改革とはいったい何か

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「社会保障や税のように社会にとって大切な分野に番号制度を導入する必要がある、ということに与野党の政治家が気付いた。つまり、消えた年金こそマイナンバーの生みの親」(マイナンバー制度研究の第一人者である野村総合研究所未来創発センター制度戦略研究室の梅屋真一郎室長)

歴代内閣の悲願だった「番号制度」

この間、与野党間での対立が全くなかったワケではない。2015年6月1日、日本年金機構は不正アクセスにより125万件(対象者は101万人)の個人情報が流出していたことを発表した。民主党ら野党はこの件を問題視し、結果9月3日に成立した改正マイナンバー法では、日本年金機構が16年1月1日からマイナンバーを取り扱う予定だったところ、最大1年5カ月間延期されることになった。

マイナンバー制度の原型を作ろうとした佐藤栄作氏。奇しくも実現したのは大甥に当たる安倍晋三氏だった(撮影:東洋経済写真部)

ただ民主党のマイナンバー小委員会で座長を務める大久保勉・参議院議員は「日本年金機構の情報漏洩事故の後、一部の国会議員からはマイナンバー制度の開始時期を遅らせるべきという意見もあった。だが民主党は大枠として問題ないと判断している」と語る。自らが政権担当時に起案した制度だけに、民主党もマイナンバー制度の推進には政府と足並みを揃えているといえる。

さかのぼれば日本の番号制度は、1968年の佐藤栄作内閣が「各省庁統一コード研究連絡会議」を設置し、全国民に個人コードの付与を計画したことに始まる。しかし、「国民総背番号や国民監視社会になる」との野党の反発を受け、利用制限などが理由で大失敗に終わった住民基本台帳カードを含め、歴代内閣において約半世紀の間実現されなかった経緯がある。

今回は民主党が一度政権を取ったことで、風向きが変わった。「民主党政権で唯一まともに残った政策かもしれない」(前出の野村総研・梅屋氏)。情報漏洩など国民の不安が残る中、政府は悲願のマイナンバー制度を円滑にスタートできるのか。戦後最大の制度改革は、野党を巻き込んだ総力体制で始まろうとしている。

二階堂 遼馬 東洋経済 記者

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にかいどう りょうま / Ryoma Nikaido

解説部記者。米国を中心にマクロの政治・経済をカバー。2008年東洋経済新報社入社。化学、外食、ネット業界担当記者と週刊東洋経済編集部を経て現職。週刊東洋経済編集部では産業特集を中心に担当。

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