中国化か江戸時代かがつねに日本史の対立軸--『中国化する日本』を書いた與那覇 潤氏(愛知県立大学日本文化学部准教授)に聞く

 ──世界の「中国化」が進むと、何が起きるのでしょう。

先進国でも途上国でも、国家を頼れなくなる。企業や地域共同体も拠り所にはならず、個人のネットワークを使って生き延びるしかない。ウェブ上のソーシャルネットワークの急激な普及はその先触れだが、中国人の伝統的な生き方に重なる。

──現在の中国をどう見ますか。

「理念」を統治の核に据えて、権力の一極集中を正当化するのが伝統中国で、今日も儒教道徳が共産主義に変わっただけ。だがその理念の空虚さが明らかで、外向けのソフトパワーに欠けるのが、覇権国になるには決定的な弱点。日本としては、中国より高い理念を掲げることこそが外交上の力になる。TPP(環太平洋経済連携協定)ではないが、「環日本海不戦パートナーシップ」を持ちかけて、中国も憲法9条にサインを、くらいの姿勢で臨んでは。

──「平和憲法で中国を抑制」という本書の結論は、珍しい提案です。

日本史上では「中国化か江戸時代か」がつねに対立軸なのに、冷戦下でしか通用しない「右か左か」で考え続けていることが、思考力を奪っている。戦後の一国平和主義は「鎖国」で対外紛争を防ぐ江戸時代的な発想だったが、「中国化」の時代には、憲法の別の活用法もあっていい。

(撮影:和田英士 =週刊東洋経済2012年2月18日号)記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。


よなは・じゅん
1979年生まれ。東京大学教養学部超域文化科学科卒、同大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得満期退学。博士(学術)。専攻は日本近現代史。著書に『翻訳の政治学--近代東アジア世界の形成と日琉関係の変容』『帝国の残影--兵士・小津安二郎の昭和史』。

 

『中国化する日本』 文芸春秋 1575円 319ページ

  

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