東大卒の国語塾経営者が選ぶ、国語力がメキメキ上がる小学生向けマンガ7選 『SPY×FAMILY』『ヒロアカ』など有名作品も

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新コボちゃん (1) (まんがタイムコミックス)
『新コボちゃん (1) (まんがタイムコミックス)』(芳文社)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

4コママンガは1作品に数十文字しかない分、言葉選びには気が遣われています。ダブルミーニング(1つの文章や言葉に2つの意味があること)など言葉遊びも多く、語彙力を鍛えやすいのもポイントです。

とくに、植田まさしさんの作品はダブルミーニングの宝庫。『コボちゃん』は全国紙で連載していたこともあり読みやすく、小学校低学年でも楽しめるでしょう。2023年にテレビドラマ化された『かりあげクン』は、おふざけ要素もあって全学年におすすめ。私が最も好きな『フリテンくん』は、語彙が秀逸なものの一部露骨な描写もあるため、より上の年齢層に推奨します。

秋月りすさんの『OL進化論』は、会話が中心となる作品です。慣れないうちは、ぜひ親が一緒に読んであげてください。私も最初の頃は親が解説してくれていました。自分でもオチの面白さを説明しようとしたのですが、なかなか難しくて。でも、繰り返すうちにだんだんうまくなり、この積み重ねで国語力がかなり鍛えられたと感じています。

4コママンガは1つ1つが短く完結しているため、理解できないものがあってもストレスになりません。「全部がわからなくてもマンガは楽しめる」という気づきを得られるのも大きいと思います。

5.『ひゃくえむ。』(魚豊)

 

ひゃくえむ。新装版(上) (KCデラックス)
『ひゃくえむ。新装版(上) (KCデラックス)』(講談社)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

魚豊さんの作品は、最近アニメ化された『チ。 ―地球の運動について―』が有名ですが、国語力を上げるのにおすすめなのが、『ひゃくえむ。』。

100m走をテーマにしたスポーツマンガで読みやすく、新装版は上下2巻構成と手に入れやすいのもポイントです。この作品では、100m走に対して正反対の価値観を持つ主人公とライバルの二項対立が描かれています。

着目したいのは上巻の90ページ。「何のために走るのか」と質問された中学生ランナーが「1位を取るためだよ」と答えるのを聞いて、左下の主人公は「?」、右下のライバルは「!」と反応します。

ひゃくえむ。
『ひゃくえむ。新装版(上) (KCデラックス)』(講談社)p90より
中学生ランナー(上)の発言に対する、主人公(左下)とライバル(右下)の反応は正反対だ
(画像:講談社提供)

主人公の「?」は、「何を当たり前のことを言っているのか?」というニュアンスでしょう。対してライバルの「!」は、核心をつかれて思わず息を吸い込んだ表情をしています。主人公には疑問符「?」がついていますが、表面上のスタンスは中学生ランナーと同じです。しかし、本当の意味で、中学生ランナーが「1位を取る」ために背負う苦しみや覚悟を理解しているのは、実はライバルの方なのです。この複雑さは、表情や吹き出しがなければ読者に伝えるのは難しいでしょう。価値観の対立や、急激に変わっていく主人公の心情が、マンガならではの技法で非常に読み取りやすく表現されている素晴らしい作品です。

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