東大卒の国語塾経営者が選ぶ、国語力がメキメキ上がる小学生向けマンガ7選 『SPY×FAMILY』『ヒロアカ』など有名作品も

さらに、書く勉強には「身体が疲弊する」「スピードに限界がある」などのデメリットもあると神田氏は語る。
「書く行為は、腕や姿勢など身体に少なからず負担がかかります。脳が元気でも、身体が疲れることで勉強の集中力が失われる実感もありました。さらに、書くスピードをいくら速めようと頑張っても、腕の動きには限界があります。しかし、読むスピードは速読の訓練で何倍にもできます。実際に小学生と東大生の平均を比較すると、書くスピードはあまり差がなかった一方で、読むスピードには2倍以上の差がつきました(上グラフ参照)」
本よりも、「むしろマンガ」で国語力が上がる理由
1日の勉強時間をあえて短くして工夫させる、これがまさに、ルールを決めた親の意図だったそうだ。そして神田氏にはもう1つ、親に感謝していることがあるという。それが神田家の2つ目のルール、「本やマンガは無限に買っていい」だった。とはいえ、「本はまったく読んでこなかった」と神田氏。小中学生のころはもっぱらマンガを読み漁っていたという。
「両親の本棚にあったマンガを、3歳頃から手に取っていた記憶があります。『めぞん一刻』など、当時から大人向けの作品を読んでいました。小学校時代は1日に平均5〜6冊、さらに漫画喫茶やマンガ専門の古本屋にも足を運びましたね。ノベルゲームにものめり込んでいたので、活字を見た回数や言葉のシャワーを浴びた量でいえば、学年でも圧倒的トップだったと思います」
ノベルゲームは、プレイヤーの選択でストーリー展開が決まる。必然的に、文章を能動的に理解する訓練になったという。また、幼いうちから大人向けの作品に触れることも、言葉の意味を能動的に学ぶ習慣につながった。神田氏は、これが国語力の向上に役立ったと分析すると同時に「本に対する神話には違和感がある」と語る。
「本は、マンガと比較して能動的に読むのが難しいメディアだと思います。わからない言葉があっても読み飛ばせてしまいますし、太線処理や色付けがないため、読み方に強弱をつけにくい。文章を読み始めたばかりの子どもにはハードルが高すぎて、国語力向上の目的で読ませるのはおすすめしません」
一方で、「マンガは気軽に手に取れて、面白いので長く続きやすい」と神田氏。
「マンガには、フォントやコマ割りなど作品内に強弱があります。また、セリフとともに表情や情景が描かれるため、ストーリーへの理解はもちろん、言葉や表現への理解も深まります。こうした “補助輪機能”があることで、本では読み切れない複雑な内容にも挑戦できます。国語力は、自分のレベルよりやや上の文章に触れてこそ上がると思うのです」
大人でも、たとえばスペイン語でサッカーについて書かれた本は理解できないが、スペイン語で書かれたサッカーマンガであれば、ある程度内容を楽しめるだろう。
「マンガは、多少わからない言葉があってもあまり問題になりません。国語力を育むスターターキットとして、大変有効だと思います」
小学生の国語力を上げる、「おすすめマンガ」7作品
ここでは小学生の国語力アップが期待できるマンガ7作品を、神田氏の解説つきで紹介する。最初の4作品はいずれも4コママンガだ。
2.『コボちゃん』(植田まさし)
3.『フリテンくん』(植田まさし)
4.『OL進化論』(秋月りす)
国語力を上げるマンガにおいて、4コママンガの右に出るものはないかもしれません。その魅力は、なんといっても短さ。20~30秒で読めてハードルが低い一方で、たった4コマから面白さを感じるには読解力が求められます。起承転結の論理や行間を理解するトレーニングとして、非常に優れた題材だと思います。