生成AIによる著名アーティストのニセ楽曲に注意 AIを活用する悪徳業者からメタデータをどう管理するか
具体的には「GONG」「Yes」「Asia」といったレジェンド級バンド名義でAIっぽい電子音楽アルバムが追加されるなど、ファンを困惑させる事態が相次いでいる。
Ars Technicaは、膨大な楽曲データを一括登録するシステムと、AI技術やセルフリリースの爆発的増加が原因と指摘している。配信プラットフォーム側もメタデータの審査を強化しているが、人手による確認には限界があり、なりすましが入り込んでからユーザーの通報でようやく発覚するケースが後を絶たない。Spotifyでも“厳格化に向けた取り組み”を行なっているというが、完璧な対策には至っていない。
こうした“なりすまし”を防ぐために、Qobuz広報によれば以下のような取り組みを行っているという。
2. 自動化ツール(AIやアルゴリズム)の活用 → 同名アーティストや類似データを識別
3. 専門チームによる手作業レビュー → 自動ツールで検出できない複雑な混同や誤登録を修正
4. ユーザーからの報告 → サプライチェーンチームが調査・訂正・削除を実施
5. メタデータ提供者との連携強化 → 誤りや問題が生じた際に改善プロセスを共有
同社は「今回のケースは共通の課題であり、短期間で問題解決を目指している」と述べ、偽コンテンツを検出すると通常1~2日以内に対応しているとしている。一方で「AI生成の音楽に関しては、現時点で特定の自動管理システムを導入していない。配信責任はレーベル側にあり、不正コンテンツが確認された場合はレーベルが法的責任を負う」という回答もあった。
実際のところ、「YUIはすでに修正済み」との見解とは裏腹に、依然として別アーティストの楽曲が混在している部分が確認されるなど、必ずしも完全には解消されていない。また、SMAP名義のグロテスク画像など問題視されるコンテンツも放置されている。理想的な仕組みを掲げながら、ユーザー報告や手作業レビューがどこまで徹底できるのか、課題が残ると言わざるを得ない。
ハイレゾ配信を守るためユーザーにもできること
音楽配信の敷居が低くなったことで、新人アーティストが活躍しやすくなるのは喜ばしいが、“なりすまし”や誤登録による混乱は配信サービス全体の信頼を揺るがす。特にQobuzのようなハイレゾ配信は、「正規音源を最高の音質で楽しみたい」という期待が強いだけに、誤ったコンテンツが放置されれば深刻なダメージを与えかねない。
Qobuzが掲げる多段階チェックや短期修正対応は一定の評価に値するが、YUIやTOKIOの事例が示すように管理体制はまだ不十分だ。SMAP名義のグロテスク作品も含め、同名アーティストの混同は根絶できていない。今後はAI技術やレーベルとの連携をさらに強化し、ユーザーが安心してハイレゾ音源を選べる仕組みが求められるだろう。
もっとも、プラットフォームにすべてを任せるだけでは防ぎきれない部分もある。ユーザー自身がタイトルやジャケットに違和感を覚えたら視聴を控え、怪しい作品を見つけたら報告するなど、リテラシーを持って利用する姿勢が大切だ。ハイレゾ配信の“品質”を守るには、企業とユーザーの双方が“なりすまし”問題に目を向け、改善を重ねていく必要がある。
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