生成AIによる著名アーティストのニセ楽曲に注意 AIを活用する悪徳業者からメタデータをどう管理するか

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

本来、SMAPはQobuzで公式にハイレゾ配信を行っていないにもかかわらず、あたかも最新アルバムのように並んでいるこれらのタイトルは、有名グループ名を利用したいたずらや便乗商法の可能性が高い。ハイレゾ配信を求めてQobuzを訪れたユーザーがこうした作品を誤って購入すれば、サービスへの不信感を抱くだけでなく、アーティストのブランドを傷つける行為につながりかねない。

もう1つの例が「TOKIO」だ。元ジャニーズ所属バンドであるTOKIOは、ストリーミングやダウンロード配信を解禁していないが、Qobuzのページに海外アーティストのアルバムと混在している。

YUIやTOKIOの偽コンテンツをQobuzに指摘したところ、約1週間ほどでTOKIOのページは削除され、YUIのページも大量の不正コンテンツを修正したと説明を受けた。しかし、YUIに関しては別名義のアーティストが混在するなど、不完全な面が残っているのが現状だ。SMAP名義で卑猥なテーマやグロテスクな表現を用いたアルバムは依然、多数確認でき、Qobuzが掲げるメタデータ管理の仕組みが問題なく機能しているとは言いがたい。

1週間ほどで修正を行い、説明を示したことから、Qobuz側がユーザーの指摘に対して一定の応答速度を持ち合わせていると捉えられる。しかし、同名アーティストの混同が根本から解消されたわけではない以上、“なりすまし”の温床となっている事実は残る。今後も継続的なフォローアップが必要だろう。

AI音楽生成がなりすましを加速させる要因に

こうした“なりすまし”が横行する背景の1つに、AI音楽生成技術の急速な進歩がある。近年、個人でも短時間に大量の楽曲を制作できる環境が整いつつあり、メロディや和音進行を自動生成し、仮想ボーカルに歌わせることも容易になった。かつては専門知識を要した音楽制作が、“手軽なセルフリリース”として爆発的に増えつつある状況だ。

これまではリリースまでに大きな手間とコストがかかったが、AIやオンラインサービスを活用すれば、労力をかけず多作を狙える。こうしたAI生成音源が有名アーティスト名義を装って配信されるケースが増えれば、問題はさらに複雑化・深刻化するだろう。YUIやSMAPの事例も、こうした技術トレンドと無縁ではない。

“なりすまし”問題は、Qobuzや日本だけにとどまらない。スウェーデン発の大手ストリーミングサービス「Spotify」でも、有名バンドのページに無関係な音源が大量に登録される事件があったと、アメリカのテック系メディア「Ars Technica」が報じている。

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事