中国国民党「ドラマが気に入らない」で予算カット? 歴史に忠実な内容でも、制作側の反中姿勢が許せない

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

しかし、内容のポイントは台湾人の複雑な歴史、忘れつつあった歴史の一部を描いたもので、制作側からすればことさら日本や戦勝国側を持ち上げることはない。

一方で、公視のドラマはこれまでも内外で評価が高く、ネットフリックスで世界配信され、日本のテレビ局とも共同制作している。

例えば2018年に放映された『子供はあなたの所有物じゃない』はネットフリックスで話題となり、和訳書が出版されるほど注目された。

また作家の吉田修一さんの原作で、台湾新幹線を題材にした『路(ルウ)』をNHKと共同で制作、2020年に放映された『路〜台湾エクスプレス〜』は日台双方で公開されてもいる。日本人にとって公視は、実は馴染みの存在だったと言えなくもない。

戒厳令の時代が絡む台湾のテレビ事情

実は、戒厳令下の台湾ではメディアは当局の検閲を受けてきた歴史を持つ。そのような中で、出版物やラジオ局、ケーブルテレビチャンネルなどは言論弾圧をかわす役割を担ってきた。今日の台湾でケーブルテレビ大国ともいえるほど普及したのは、そういった抑圧の歴史が背景にある。

しかしそれらは裏を返せば「主張する」メディアだと言えなくもない。スポンサーや協力団体が背後にいる以上、どうしても主張や経済利益などを考えなければならないが、時の政権やスポンサーに過度に干渉されないメディアを確保するにはどうしたらよいか。台湾が出した1つの解が、NHKやイギリスBBCのような公共放送であり、公視がそのような役割を担ってきたのだ。

公視は作り手にとって比較的自由な制作環境を与えた一方、視聴率などで低迷。たびたび社会から指摘を受けることがあった。さらに財源を政府の交付金と自主財源に頼り、制作規模や企画によっては予算不足に陥ることもあり、予算カットでは格好のターゲットにされてきた。

しかし今回の公視の問題では、表向きはコストパフォーマンスの問題だが、裏では予算カットに主導的な役割を果たしたとされる立法委員の個人的な感情によるものとの情報が飛び交っている。それは『聴海湧』が思いのほか高い評価を得て成功し、それは戦勝国である「中華民国」としての史観では受け入れられないとみなされたためだ。

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事