鳥インフルの拡大懸念で「卵不足」の今後の見通し 過去最悪2022ー2023年との違いを獣医師が解説

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ただ、タンチョウやコウノトリ、トキといった天然記念物などの希少鳥が高病原性鳥インフルエンザにかかった際は、しっかりした監察下のもとで抗ウイルス薬を使って治療する研究が行われているそうだ。

ワクチンについては現在、中国、東南アジアのほか、アヒル(フォアグラ)を食べる習慣のあるフランスなどで接種が行われているが、日本、韓国、台湾などの東アジア、ヨーロッパ、アフリカ、アメリカでは行われていない。

その理由について迫田さんは、「ワクチンは感染防止ではなく、発症防止、重症化防止に限られている。ワクチンを不用意に使ってしまうと、無症状のニワトリが出てきてしまう。そうなるとウイルスの場所を突き止められなくなってしまう」と説明する。

鳥からヒトへの感染はあるのか?

ヒトへの影響を気にする人もいるだろう。

高病原性鳥インフルエンザに関して、日本では鳥からヒトへのウイルス感染は確認されていないが、世界保健機関(WHO)からは、ベトナムや中国、カンボジア、オーストラリア、アメリカ、カナダなどで計939例の感染が確認され(2003~2024年11月1日)、少なくとも464例(49%)が死亡していることが報告されている。

「日本は発生があれば、即時に封じ込める蔓延防止策をとっていますから、これからも鳥からヒトへの感染への過度な心配はいりません」と迫田さんは話す。

だが、偶発的な感染は避けられないため、農場や動物園などの従業員は、日頃から衛生対策を徹底している。私たち一般市民も感染しないために、死んだ渡り鳥やカラスに触れてしまうことがあれば、すぐに石けんで手を洗うことが求められる。

このほかにも、迫田さんは日頃の対策として、▽散歩中の犬に死んだ野鳥に触れさせないようにする▽死んだ野鳥を見つけたら、触らずに自治体に届ける▽野鳥が集まって密状態になるのを防ぐため、餌付けをしない、などを挙げた。

例年、渡り鳥がシベリアへ帰っていく時期、本州では3月頃、東北や北海道では5月頃になると、発生は自然と収束に向かう。

「野鳥は我々や農家を苦しめるためにウイルスを運んでいるわけではありませんし、北極から南極まで鳥がいないところはないので、もはや地球上のどこでも高病原性鳥インフルエンザの脅威はあります。

しかし、何も打つ手はないということではなく、衛生対策を今一度確認して、1件でも2件でも発生が減るよう、農家を支援し、ここ1~2カ月を乗り切ることが大事です」(迫田さん)

井上 志津 ライター

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いのうえ しづ / Shizu Inoue

東京都生まれ。国際基督教大卒。1992年から2020年まで毎日新聞記者。現在、夕刊フジ、週刊エコノミストなどに執筆。福祉送迎バスの添乗員も務める。WOWOWシナリオ大賞優秀賞受賞。著書に『仕事もしたい 赤ちゃんもほしい 新聞記者の出産と育児の日記』(草思社)。

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