ローカル鉄道旅行で気をつけたい「熊との遭遇」 風情ある山間の秘境駅に下車するのは危険伴う

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地方では沿線人口が減り、我々都会人が想像する以上に野生動物が急速に増えているのではないかと思う。特急列車に乗車すると、以前は旭川を過ぎると「ここから先は野生動物が多く生息するエリアです。急停車にご注意ください」という案内放送だったが、それが滝川を過ぎてからになり、近年は、時間帯にもよるだろうが岩見沢を過ぎるとこのような放送がある。

根室本線や九州の肥薩線に夕刻時に乗ったときは、沿線におびただしい数の鹿がいてびっくりしたことがある。夜間だと目が光るので昼間よりその数の多さが分かる。「こんなにいるのか!」という状況である。

動物目線からすると、かつてのような蒸気機関車が引く長い貨物列車に追いかけられたら怖かっただろうと思う。煙をモクモク吐き、汽笛を鳴らし、目(ヘッドライト)を光らせて近づいてくる。重い貨物列車は上り勾配で停止させたら再び動き出すのは大変なので、制動せず突進してきたであろう。鉄道に追いかけられた動物は二度と線路のあるほうへは近寄らなかっただろう。

しかし、現在は動物目線から見て怖くない列車が多い。ディーゼル発電でモーター駆動する静粛な車両が1両で走っていたのでは野生動物も敵とは思わないのではないだろうか。ローカル線が次々に廃止されていることもあり、野生動物の領域はますます拡大されていくだろう。

塩狩駅通過のエンジン発電モーター駆動車両は静粛で動物も怖くない?(筆者撮影)

早急に効果のある対策が必要

JR北海道のローカル線は、冬は雪対策、雪のない季節は野生動物対策で大変だと感じる。乗客が多ければ対策費用も必要だが、乗客は数えるほどしかいないので、対策費用の捻出も難しいであろう。熊と衝突した場合、安易に乗務員は車外に出ると危険を伴うので、根室本線では熊と衝突の列車が一晩動けなかった例もある。

「青春18きっぷ」のポスターにあるような、山間の無人駅にぶらりと途中下車することは、現実には危険を伴う。筆者も最近、北海道、群馬、富山などを観光中「熊出没注意」の看板を見たことがあり、これらは駅周辺での話である。

鹿や猪などを含めれば日本全国の話になる。放っておけば、観光客、さらに熊の怖さなどを知らない外国人観光客が事故に巻き込まれることだってありうる。鉄道旅行に限らず、自転車、モーターバイクの旅も躊躇するだろうし、車での旅行であっても対応次第では危険を伴うであろう。そもそも野生動物の多い地域への旅行そのものが敬遠されるかもしれない。

台風や大雨であれば、旅行中に遭遇しても日程が台無しになるだけですむが、熊に遭遇してしまったら生命に関わることになる。増えすぎた野生動物対策は自治体や国がはっきりした方向性を持って、現在以上に積極的な対策を考えてほしい。

谷川 一巳 交通ライター

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たにがわ ひとみ / Hitomi Tanigawa

1958年横浜市生まれ。日本大学卒業。旅行会社勤務を経てフリーライターに。雑誌、書籍で世界の公共交通機関や旅行に関して執筆する。国鉄時代に日本の私鉄を含む鉄道すべてに乗車。また、利用した海外の鉄道は40カ国以上の路線に及ぶ。おもな著書に『割引切符でめぐるローカル線の旅』『鉄道で楽しむアジアの旅』『ニッポン 鉄道の旅68選』(以上、平凡社新書)などがある。

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