ローカル鉄道旅行で気をつけたい「熊との遭遇」 風情ある山間の秘境駅に下車するのは危険伴う

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ところが最近の鹿はかつてとは異なっている。稚内から朝の札幌行き特急に乗車した際、南稚内を過ぎると、列車は常に警笛を鳴らしながら加速しては減速、加速しては減速する。線路のすぐ脇に鹿が群れ、鹿はこちらを見てキョロキョロしている。「なんで我々が列車をよけなければならないんだ」と言わんばかりである。かつて死に物狂いで逃げていた鹿とは明らかに異なる。

廃止が決まっている抜海駅を通過、構内に鹿の姿があった。筆者はかつてこの駅に下車し、サロベツ原野の風景に北海道を実感したが、現在は野生動物が怖くて下車などできないと感じた。高校生が無人駅に下車すると親の車がすでに待っているという状況もよく見かける。連絡を取り合って、無人駅などで1人にならないようにしているのだろう。

以前から熊にまつわる話は多かった

筆者が高校生のときには熊にまつわるこんな経験をした。初めて蒸気機関車を見ることを主目的に、当時の「北海道ワイド周遊券」で旅をした。南稚内駅近くのユースホステルに宿泊、夜はミーティングがあり、自己紹介などをする。筆者以外にも鉄道撮影目的の人が数名いた。すると宿のペアレントは「この辺に茂っている笹は熊笹といい、人間が歩くと音がするが熊が歩いても音がしない」と話してくれた。筆者はこの話が気にかかり、「単独行動は危険」と取れたので、翌日は市街地を離れずにC55や9600形を撮影したのである。

熊との遭遇を避け、市街地で撮った天北線の貨物列車 1974年(筆者撮影)

石北本線ではこんなこともあった。当時は常紋信号場で下車することができた(生田原―西留辺蘂間)。周辺に民家はなく、乗降するのは鉄道撮影目的の客だけである。乗降はホームのないところで、ステップをたどって地面へ下りたのである。網走側から急勾配をD51が煙をモクモク吐きながら重そうな貨物列車を従え、後部ではDE10が後押しで登ってくる姿は圧巻であった。

常紋信号場はスイッチバック式で、遠軽側はトンネルがあり、そこが分水嶺となるので、そのトンネルの遠軽側も常紋信号場に向かって上り勾配になっている。しかし、その姿を撮影するためにはトンネル上部の山道を歩くか、トンネル内を歩くかの2択しかない。

そんな話をしていた撮影者に対し、信号場を管理するおじさんが「トンネルの上部は熊が出る、トンネルは昔、網走刑務所の囚人が掘っていて、犠牲者も出たので幽霊が出る、トンネルはカーブしているから出口が見えない、おっかないよ~」と話してくれた。

暗に遠軽側は行かないほうがいいと示していたのであろう。北海道には本州では見られないヒグマが生息し、道民はヒグマの恐ろしさを知っているので、本州から来る観光客に対し、警鐘を鳴らすような習慣があったのだと思う。

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