「クソババア!」と言われたら、親はどうする?子どもの言葉遣いが悪い時の対応 「I話法」によるフェアなコミュニケーションを
「言葉はあくまで道具であり、そこに人格を重ねなくてもよいのかもしれません。子どもに言語化を求めることは、わが子に大人っぽさを要求することにもなります。現代では子どもが少ない分、親は子どもの表情をしっかり見てすぐに察してあげますよね。そんな中で、『ママ、私はお腹が空いたので、パンをちょうだい』なんて言い始めたら、ちょっと驚くのが本音かもしれません(笑)。
学校でも、『プリントが足りないので2枚ください。手元になければ刷ってきてください』と言うと、かわいげがないと思われる可能性も。私は幼い頃からませていたので、先生によく『お前はうるさいんだよ』と言われていました(笑)。正しい言葉を遣うことと、子どもらしくかわいがられることは別なのかもしれないですね。その意味で、家庭ではわが子の子どもらしい言葉遣いを受け入れるというのも選択肢だと思っています」
一方で、子どもでもTPOをわきまえることは必要だ。また、汚い言葉を知っていることと、その言葉が相手を傷つけると認識したうえで口にすることには違いがある。
子どもの言葉遣いが気になるときの2つの選択肢
そこで五百田氏によれば、子どもの言葉遣いが気になる時の親の選択肢は2つだ。
「1つは、家庭内では甘んじて受け入れるという選択。『先生や他の人には言っちゃダメだよ』と伝え、あとは子どもを信じるのみです。万が一先生に『クソババア』と言ってしまったら、子ども自身が先生にしっかりと怒られて、学べば良いのです。ここでも、親はあくまでも『I話法』を意識しましょう。『先生に嫌われるよ』『あなたのために言ってるんだよ』とYou話法で諭すのではなく、たとえば『あなたが先生にその言葉を使うと、仕事中に学校から電話がくる。私が迷惑だからやめてほしい』などと伝えます。親心としては、お子さんのために叱っているのも事実ですが、こう工夫することで押し付けがましさが減り、子どもも受け入れやすいのです。
もう1つは、『わが家ではその言葉はダメ』とはっきり伝え、親も含めて使わないよう徹底するという選択。『家族の構成員として生活するのであれば、うちの経営方針に従いなさい』ということです。ただし、理由を添える必要はあります。『クソババア、と言われると悲しくなるからやめて』『死ね、と言われると、私が本当にあなたを残して死んでしまう日のことを考えてしまうからやめて』『キモい、と言われると、あなたが今どのくらい怒っているかわからず、戸惑ってしまうのでやめて』……ここは親の都合であれ、正直に伝えることがフェアなコミュニケーションでしょう」
どちらを選ぶかに正解はない。それより重要なのは、親が本心から感じることを、心を込めて伝えることだと五百田氏。子どもは、大人の言葉に「体重」が乗っているかどうか、すぐ見抜いてしまうのだ。親も人間であり、完ぺきではない。最後に五百田氏は、「だからこそ、大人自身も『親たるもの、~すべき』という呪いから自由にならないと」と、語った。お互いの気持ちを素直に伝え合い、フェアなコミュニケーションを心がけながら忍耐強くわが子と向き合うことが大切なのだろう。
(文:せきねみき、注記のない写真:なないろひまわり / PIXTA)
東洋経済education × ICT編集部
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