ソニーが「ラスト・オブ・アス」展示で見せた新体験 技術で拓く「ディズニーと似て非なる道」
「創出」では「バーチャルプロダクション」を紹介していた。あらかじめ撮影したり、CGで作成したりした映像をディスプレーに映し出し、これを背景にした撮影を可能にすることで映像制作を支援する仕組みだ。
バーチャルプロダクション自体は以前からあるが、新しく開発した「アキラ」というシステムでは、自動車のタイヤを実際に動かしたり、揺らしたりすることができる。そのため、より現実に近い形で撮影ができるようになっている。
「展開」で展示されていたのが、ラスト・オブ・アスだ。これはソニーが「ロケーションベースドエンターテインメント(LBE)」と呼ぶアトラクション運営事業のモックアップとなる。
ソニーの映画事業会社、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントはすでにアメリカのシカゴで、自前の体験型アトラクション施設「Wonderverse(ワンダーバース)」を展開している。
映画「ゴーストバスターズ」のVR(仮想現実)やゲーム「アンチャーテッド」のアトラクションなどが楽しめる。イギリスやスペイン、イタリアなどでもソニーのIPを使ったアトラクションが展開されている。
LBEで狙うのは「エンタメの結節点」
ただ、ソニーの狙いは、ディズニーやユニバーサルスタジオなどのように世界各地に自社のアミューズメントパークを展開し、収益の柱に育てていくことではない。
ソニーにとってLBEのための技術開発は、自社だけのためのものではなく、狙いはあくまでクリエイティブ・エンターテインメント・ビジョンの実現にある、というのだ。
「エンターテインメントの業界にいる人なら、こういう(展示したような)ことができるなら、『もっとあんなことができるな』と想像してもらえるだろう。技術的な垣根も下がっており、協業の話があればやっていきたい」
今回の展示を担当したソニー・ピクチャーズの高島芳和氏はそのように話す。さまざまな演出を可能にした技術自体はソニー・ピクチャーズが持っており、そこにプレイステーションを展開するゲーム部門のIPが加わることで、ラスト・オブ・アスの展示は誕生した。
高島氏は、「必要な技術がそろってきていることもあり、今までになかった未来の新しいエンターテインメントの形を示したいという思いで開発を進めてきた」と語る。
ソニーではIPの多面展開に向けて、事業部門の垣根を越えた「コンテンツ技術戦略コミッティー」を2021年に立ち上げ、コンテンツのさらなる活用に向けた施策を進めてきた。高島氏はこの組織の代表も務めており、成果の1つが今回の展示というわけだ。
グループ全体にとって、ゲームや音楽、映画などの各セグメントがそれぞれ独立していることはソニーの強みでもあった。一方で、相互の連携を阻み、シナジーを阻害する要因でもあった。
LBEのように各セグメントの結節点となるような取り組みがさらに広がることで、グループ内の連携が加速すれば、グループの成長は新たな段階に入る可能性が高い。十時社長が打ち出した「ビジョン」はソニーの姿をさらに変えるのかもしれない。
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