「イカゲーム2」ついに配信、ズルい"最強の続編" 単純ゲームで「分断社会」を描くエンタメ力

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新顔は緑のジャージ姿に身を包んだ参加者たちに集中し、K-POPブームをこれまで牽引してきた顔ぶれも並びます。元BIGBANGのT.O.Pと元IZ*ONEのチョ・ユリの起用は話題づくりと言えばそれまでですが、若い世代も簡単に多額の借金を負ってしまう今の世の中を反映した役柄です。

くたびれた顔つきの参加者が多かった前回との変化をここでも表しているのです。トランスジェンダーの参加者まで加える必要があったのか最初こそ疑問に思うものの、仲間の支え方が嫌味なく、人物像がよく見えるキャラクターの1人です。「ザ・グローリー ~輝かしき復讐~」や「涙の女王」で憎たらしい役を全うしたパク・ソンフンが180度違う役で魅せます。

2つのチームが敵対し合う絶望感

あの「だるまさんがころんだ」のヨンヒ人形も登場し、懐かしさと同時に不気味さがある音楽も健在です。さらに言えば、「イカゲーム」の世界観はそのままにキャラクターの変化だけでシーズン2を攻めているわけではありません。前作は格差社会をエンタメに上手く落とし込んでいた印象でしたが、今回は分断社会を風刺したエンタメ作と言えます。脚本も手掛けるドンヒョク監督の手腕が発揮されています。

人気アイドルグループIZ*ONEのメンバーだったチョ・ユリが緑のジャージ姿で登場する(画像:Netflix)

ドンヒョク監督はアジア人で初めてアメリカのプライムタイム・エミー賞のドラマシリーズ部門監督賞を受賞した輝かしい実績を「イカゲーム」で作っていますが、「イカゲーム」のヒットまでは食べていくのに苦労したことを以前、本人から聞いたことがあります。ATMで現金を引き出そうとするも数百円しか残高がなかったことも。シーズン1の冒頭にある場面は実体験が織り込まれていたのです。

時間だけはあったそうで、『賭博黙示録カイジ』や『バトル・ロワイアル』など日本の漫画を読み漁ったことも明かしていました。そんな苦労した時期に構想を練り上げたのが「イカゲーム」だったのです。ただし、企画が通るまで10年ほど待ち続けることに。Netflixが韓国に上陸したのをきっかけに持ち込み、ようやく実現した作品でもあるのです。

一方、シーズン2は世界的なヒットを受けて書いた脚本です。環境も心境も恐らく違うはずです。実際に「まったく生活が変わった」と話していました。それが影響してか、前作に漂っていた反骨心は今回、多少削がれているように感じましたが、失われていなかったのは世の中に対する絶望感です。

参加者はゲームが終わるたびに2つの選択を迫られ、「〇」と「×」に分かれたチームが敵対し合う場面を作られる(画像:Netflix)

ゲームの参加者たちは2つの選択を迫られ、「〇」と「×」に分かれたチームがお互いに敵対し合う場面を作り出しているのですが、現実社会の分断を皮肉っているのは明らかです。対立や憎悪が高まり、意味のない暴力が起こるのです。

ただのエンタメにしない最高の続編であることは保証しますが、もう1つだけズルいことがあります。シーズン3に続く以外はあり得ない終わり方だからです。不満が多少残りますが、安直に締め括られても納得はしなかったのかもしれません。ギフンが追い求めている正義はそう簡単に実現できないことが伝わってきます。

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長谷川 朋子 コラムニスト

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はせがわ ともこ / Tomoko Hasegawa

メディア/テレビ業界ジャーナリスト。国内外のドラマ、バラエティ、ドキュメンタリー番組制作事情をテーマに、テレビビジネスの仕組みについて独自の視点で解説した執筆記事多数。最も得意とする分野は番組コンテンツの海外流通ビジネス。フランス・カンヌで開催される世界最大規模の映像コンテンツ見本市MIP現地取材を約10年にわたって重ね、日本人ジャーナリストとしてはこの分野におけるオーソリティとして活動。業界で権威ある「ATP賞テレビグランプリ」の「総務大臣賞」の審査員や、業界セミナー講師、札幌市による行政支援プロジェクトのファシリテーターなども務める。著書は「Netflix戦略と流儀」(中公新書ラクレ)。

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