勤め人同士だったら愛想笑いで受け流すシーンだろう。人によっては「子会社を抱えているような大企業の一員であることを誇りたいのかな」とうがった見方をするかもしれない。しかし、自らの塾で子どもたちと率直に向き合っている麻里さんには通用しなかった。
「彼女に興味がわいて、塾のホームページを見てみました。すると、何事にもまずは国語力が大事だと書いてあったのです。私も常々感じていたけれどうまく言葉にはできなかったことです。国語力が大事。まさにその通りです!」
自然な流れで交際がスタート
昇進試験には無事に合格。昇進後も自己研鑽のためにセミナーに通い続けていた英輔さんは、大病を患って急に欠席せざるを得なくなったとき、なぜかセミナーの事務局ではなく麻里さんに仲間への連絡役を頼んだ。英輔さんはすでに麻里さんを信頼していたのだろう。回復後、お礼という名目で食事に誘い、自然な流れで交際がスタートした。
麻里さんのことを「ものすごく面白い人」と絶賛する英輔さん。50代になってようやく精神的に安定したタイミングだったことも大きいと感じている。
「転勤が多かった20代30代の頃は得意先の事務員さんとお付き合いしたことも何度かあります。でも、1年以上続いた交際はありません。たいてい相手からフラれていました。父のような人間になることが怖くて結婚に及び腰だった私を見透かされたのだと思います。両親が亡くなって実家を売り払い、都内にマンションを買ったのが48歳のときです。管理職になれたこともあり、気持ちがフリーな状態のときに彼女との交際を始められました」
一方の麻里さんは英輔さんとだったらもっと若いときに出会っていても結婚したかった、とやはり絶賛する。塾の経営者である麻里さんに妻の役割を期待し過ぎることなく、否定や批判もしない英輔さんは「人生で初めて会ったタイプの男性」だという。
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