「トランプ2.0」は吉か凶か、2025年の経済を読む FRBがトランプ氏の政策に翻弄されるのは必至
移民規制は国境管理に対応する。バイデン政権の移民規制緩和が賃金インフレの低下につながったから、規制強化は賃金インフレを再燃させると懸念する人は多い。
ただ次期政権の主眼は、不法移民流入による低中所得者の賃下げ圧力を取り除くことだ。目的は低中技能労働者から不法移民活用で利益を享受する企業への所得移転の遮断にあり、生産性上昇率を悪化させることにもならないはずだ。
関税強化は経済ナショナリズムに対応
関税強化は経済ナショナリズムに対応する。目的は2つ。1つは製造業の国外移転で失われた中間的な賃金の仕事の国内回帰だ。もう1つは成長分野の育成である。実は、アメリカには建国から第2次世界大戦終結まで関税を原資に国内産業を育成してきた長い歴史がある。建国時のアレグザンダー・ハミルトンを嚆矢(こうし)とする介入政策がアメリカを英国に次ぐ工業国とした。
それを手本にしたのが、ドイツのフリードリヒ・リストの幼稚産業保護論であり、19世紀後半にドイツの急速な工業化を後押しした。明治維新後の日本や20世紀末の中国の高成長のモデルにもなった。
問題は、多くの産業で世界の先頭を走るアメリカで幼稚産業保護が機能するかだ。むしろアメリカの競争力低下を懸念する人も多いだろう。
ただ経済ナショナリズム政策では、戦後の高成長の礎となり数々のイノベーションを生み出した国防総省・国防高等研究計画局の活用が技術覇権強化の中心として据えられている。バンス次期副大統領が提唱する労働者の技能底上げのための教育改革やトランプ1.0(1期目)で未完に終わった大規模インフラ整備も構想されている。必ずしも競争力や潜在成長率を低下させる政策とはならない。
超大国のアメリカが高関税を課すことは、世界経済への大きな重しにならないのか。そのリスクはあるが、中国への大幅関税強化はあくまでディールの材料であり、実行されるかどうかは不確実だ。
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