テキストが動画にChatGPT「Sora」のインパクト 文章で指示するだけで映像が動く

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米Toys “R” Us(トイザらス)は公開前のSoraで生成したCMを公開したが、その内容には批判も巻き起こった(Toys “R” UsのCM公開ページよりスクリーンショット)

法的な観点からも課題は多い。TechCrunchの報道では、トレーニングデータに関する著作権問題が指摘されている。IP専門弁護士のJoshua Weigensbergは「ライセンスのない動画を使用してAIモデルを訓練する企業は多くのリスクを抱えている」と警告する。

さらに深刻なのは、偽情報拡散のリスクだ。The Conversationの分析によれば、Soraのような技術は「公衆衛生対策を危険にさらしたり、選挙に影響を与えたり、さらには司法システムに偽証拠を持ち込む可能性がある」という。特に、ディープフェイクを使用した個人への攻撃は、被害者とその家族に壊滅的な影響を及ぼす恐れがある。

こうした懸念に対し、OpenAIは複数の対策を講じている。すべての生成映像へのメタデータとウォーターマークの付与は、その一例だ。また、有害コンテンツの生成制限や人物の無断使用禁止といった明確なガイドラインを設けることで、技術の悪用防止を図っている。さらに、専門家との協力のもと、誤解を招くコンテンツの検出ツール開発も進めているという。

しかし、テクノロジーの発展スピードに対して、法的・倫理的なフレームワークの整備が追いついていないのが現状だ。この技術がもたらす恩恵を最大限に生かしながら、いかにしてリスクを最小限に抑えるか。それが、OpenAIと社会に突きつけられた課題となっている。

OpenAIが描く次なる一手

OpenAIにとって、Soraの開発には3つの重要な意味がある。第1に、AIと人間の新しい創作の形を探ることだ。クリエイターたちとの試験運用からは、AIによる映像制作の可能性が見えてきているという。

第2に、人間とAIのコミュニケーションを、テキストだけでなく映像を通じても実現することだ。OpenAIは、コンピューターとの対話の方法そのものを変えようとしている。

そして第3に、この技術は「物理世界のシミュレーター」の開発に向けた重要な一歩と位置づけられている。現在のAIは、すでに光や影の変化、物体の動き、基本的な物理法則を理解し始めている。OpenAIは、この技術をさらに発展させ、3次元空間の理解と再現を目指す。そのための基礎技術として、映像生成の精度を高めているのだ。

AIが現実世界をより深く理解できるようになれば、その応用範囲は映像制作の枠を大きく超えるかもしれない。人間の想像力とAIの技術を組み合わせることで、これまでにない表現や活用の可能性が広がろうとしている。

石井 徹 モバイル・ITライター

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いしい とおる / Toru Ishii

1990年生まれ。神奈川県出身。専修大学法学部卒業。携帯電話専門媒体で記者としてのキャリアをスタート。フリーランス転身後、スマートフォン、AI、自動運転など最新テクノロジーの動向を幅広く取材している。Xアカウント:@ishiit_aroka

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