真面目な親が陥る"闇バイト"の温床になる子育て 親は子供にとって「指示役」になってはいないか?

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主体性が低ければ、社会でやっていくのは難しいと言わざるを得ません。いまの時代、いわゆる「指示待ち人間」を歓迎する職場はまずありません。事例に出てきたトモヤは、闇バイトを通じて特殊詐欺に加担することとなりました。

犯罪だとわかっていながら、躊躇せずにやりました。指示された通りに動くだけ。それはトモヤにとって馴染みのあることです。指示されたら、何も考えずにその通りにすればいい。「それは本当に正しいのだろうか?」という疑念を封じ込め、命令に従いました。

こういった闇バイトで捕まる非行少年たちは、多くは自立が難しい子です。普通のバイトがつとまらず、現状を打開するような策を考えることもできません。指示通りに動くことはできるし、ある意味真面目なのですが、それだけでは社会生活ができないのです。

知っているのに騙される、特殊詐欺

さて、トモヤが関わってしまった特殊詐欺について。

犯罪全体の数は減少を続けている中で、増加しているものがいくつかあります。特殊詐欺はその1つです。

警察庁の定義によれば、特殊詐欺とは「被害者に電話をかけるなどして対面することなく信頼させ、指定した預貯金口座への振込みその他の方法により、不特定多数の者から現金等をだまし取る犯罪」を指します。詐欺は昔からある古典的な犯罪ですが、近年インターネット等を使って犯罪に加担する人を増やし、被害を増やしています。

令和4年の特殊詐欺の認知件数は1万7570件で、被害額は370.8億円。いずれも前年に比べて増加しています。特殊詐欺の手口については、よくメディアでも取り上げられていますし、広く認知されていると思います。特殊詐欺撲滅を目指して、金融機関や役所等に啓蒙ポスターが貼られているのを見たことがある人も多いでしょう。

それなのになぜ、いっこうに減らないのでしょうか。特殊詐欺は防ぐのが難しい犯罪です。警察や役所も啓蒙活動を頑張っていますが、なかなか思うような成果を上げられていません。事実、私も警視庁や東京都庁の特殊詐欺対策に深く関わっており、その防犯の難しさを目の当たりにしています。

ほとんどの人は、まさか自分がターゲットにされるとは思っていないのでしょう。心理学的に言うと、「認知バイアス」が働いています。とくに、自分に都合のいい情報しか耳に入らないという「確証バイアス」と、異常なことが起きたときに「たいしたことじゃない」と考えて心を落ち着かせようとする「正常性バイアス」が働き、合理的な判断ができなくなってしまいます。

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