ドゥカティ「ムルティストラーダV4S」王者の貫禄 快適な冒険を求める大人のアドベンチャーバイク
当日は生憎の雨天だったが、かえって新型の実力が光った。スイッチひとつで「ウェット」モードに切り替えると、出力特性が穏やかになりコーナリングABSやトラコンも最適化されるだけでなく、驚くことにサスペンションも低ミュー路面でのグリップを優先した「ウェット」専用の設定へと自動調整される。欧州の滑りやすい路面のはずなのにタイヤが吸い付くような安心感だ。
ブレーキも進化していた。新たにリアブレーキ操作だけでも前後に最適な制動力を配分される機能が付いて、けっこうなペースで走っていてもほぼリアブレーキだけで間に合ってしまう。変な話、土砂降りの中でラフにアクセルを開けても急ブレーキをかけても、なかなか破綻してくれないのだ。4輪に例えるならハイメカ満載の高級SUVといった感じかも。「そんなバイク任せは望んでいない」という人もご安心を。こうしたサポート機能は手元のスイッチで最低限にすることもできる。自分でバイクを操る楽しさを奪われることはないのだ。
快適で安全な旅をスタイリッシュに楽しみたい大人へ
続いて林道にもトライ。オプションのクロススポークホイールにデュアルパーパスタイヤ(ピレリ・スコーピオンラリーSTR)を装備したダート仕様に乗り換えてトライした。さすがに1200ccの排気量とフル装備で250kg近い車重にビビりながらスロットルを開けていく。
走行中に「エンデューロ」モードに切り替えるとエンジン出力が115psに抑えられ出力特性もよりマイルドに。電制サスは悪路に備えて自動的にプリロードを上げつつもストロークする設定となり、リア側のABSが解除されてトラコン介入度も最小限となる。簡単にいうとオフロードバイクに変身するわけだ。アルミ製ボックスを車体左右にマウントした状態でもあまり意識することなく普通に走れるし、慣れてくると後輪を軽く流しながらコーナーを立ち上がるアドベンチャーらしい走りもできてしまう。
とはいえ、ガチなオフロードを泥まみれになって進むためのバイクではない。快適で安全な旅をスタイリッシュに楽しむための最適解なのだ。新型ムルティストラーダV4Sは本来の優れたパフォーマンスを底上げしつつ、さらに全方位的な進化を遂げていた。いい歳をした大人のライダーにこそふさわしいアドベンチャーバイクである。
なお今回試乗したのは欧州仕様。日本導入モデルの価格はV4Sが337万7000円~、スタンダード仕様のV4が279万8000円~(消費税込み)となっている。また、私のオフィシャルYouTubeでも「新型ムルティストラーダV4S海外試乗インプレッション」の動画をアップしているので、ぜひあわせてご覧いただきたい。
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