「デカいiPad」は、誰が何をするマシンなのか iOSデバイスとMac、その線引きはどうなる?
僕もなんとか持ち出し荷物を軽量化するために、iPadとキーボードで仕事できないかとトライしたことがあった。実際にやってみると、Evernoteに取材メモを取るといった単純な仕事は可能だが、資料やウェブで調べ物しながら原稿を書いていくといった作業では、とたんに行き詰まる。これなら非力でもWindows 8.1タブレットのほうが、よほど使える。
有償のネット動画サービスにしても、日本においてはあまり日常的に使われている感じはない。Netflixが始まってまた変わるかもしれないが、現在はそうだ。YouTubeやニコニコ動画は、もはやコンテンツに払うカネがない学生や若者がスマホで利用するためのものになってしまっている。
iPadそのものは、いいデバイスだと思う。だが日本においてはiPadの活用率はそれほど高まっておらず、買ったはいいが使ってないという家庭もそこそこあるのではないだろうか。日本においてiPadは、さんざん色々やったが、ライフスタイルにうまくハマらないピースだったのだ。
iPad Proが実現するもの、しないもの
iPad Proのプレゼンテーションでは、さまざまな可能性が示唆された。MS Officeが2画面で駆動できるという点や、スタイラスペンでなめらかにグラフィックスが手書きできるという点、3Dグラフィックスを使ったインタラクティブな教育や医療活用例など、幅広い可能性を感じさせるプレゼンテーションであった。
ここまで見て思い出したのが、「VAIO Z Canvas」である。ソニーから独立してVAIO(株)になったことで、開発中の状況などがより詳しくプレスに公開されるようになった。これによって、なめらかにペン書きする仕掛けや、強力なプロセッサをタブレットに入れる困難さといったことを、勉強させていただいた。価格が24万9800円と、Windowsタブレットとしては高価だが、それに見合うだけのモンスターマシンである。
そしてこのマシンが狙うのは、「プロのモバイル」市場だ。例えばプロのイラストレーター、漫画家といった方が打ち合わせしながらラフ描きに使うとか、4K RAWの動画を撮影現場でカラーグレーディングしながらプレビューするといった使い方である。
フィニッシュまでやれるパワーはあるが、やらない。12.3インチでは、画面が小さすぎるからだ。フィニッシュはやはりデカい画面と広いコントロール領域でやるほうが、効率は上がる。だがプロのためのサブツールとして見れば、価格もリーズナブルだし、完成度が高い。
ではiPad Proはそのポジションなのか。実際に製品が発売されて、多くの人が使い始めれば、全然OKという人と、これじゃダメだという人に分かれるだろう。それは、人それぞれというのではなく、仕事のポジションが違うからだ。
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