「山手線の兄弟」がタイで勝ち取った"果実" これがニッポンの鉄道産業が進むべき道だ

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船に積み込まれる「パープルライン」の車両(撮影:尾形文繁)

ただ、これらを除くと「サスティナとして共通化されている部分は多い」(丸紅)。こうしたコストダウンとメンテナンスのしやすさが、受注成功のカギとなったのは間違いなさそうだ。

今回の案件のもう1つの特徴は、メンテナンス事業を受注していることだ。鉄道車両や地上設備について、10年間のメンテナンス業務も受託している。「鉄道運営会社を含めた日本企業連合が海外で鉄道メンテナンスを行うのは、今回が初めて」(丸紅)。

メンテナンス会社は東芝、丸紅、JR東日本などが共同で設立し、日系社員も送り込まれている。「バンコクの都市鉄道路線については、今後も受注を狙っていきたい」と丸紅の担当者は意気込む。

とはいえ、彼らのライバルは外国勢だけではない。ほかの日本勢もライバルだ。ブルーライン、パープルラインに続く全長40キロメートルの「レッドライン」は、住友商事・日立・三菱重工で構成される別の日本連合が受注獲得に取り組んでいる。

高速鉄道より都市鉄道が狙い目

タイでは、バンコクとチェンマイを結ぶ高速鉄道計画も進行中。日本だけでなく、中国も強い関心を示しているが、日本の新幹線方式の採用を前提として、今年5月に日本とタイの両政府が合意した。

もっとも、日本の受注確実とみられていたインドネシアの高速鉄道(ジャカルタ―バンドン間)は、9月3日に白紙撤回が決まったばかり。需要に対して建設費が高額だったことがネックになったとみられる。国家プロジェクトとして巨額の費用を伴う高速鉄道の受注は、一筋縄ではいかない。

それに引き替え、都市鉄道は高速鉄道より需要予測が正確で、投資費用の回収が確実だ。プロジェクトとしては、高速鉄道よりもずっと取り組みやすい。世間の関心は高速鉄道に向かいがちだが、世界の都市鉄道計画はもっと注目されてよい。都市鉄道での実績の積み重ねが、さらに大きなプロジェクトの受注にもつながるはずだ。

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