欧州債務危機の行方、ユーロは崩壊するのか--欧大手コンサルテング会社創業者・ローランド・ベルガー氏に聞く
もっとも、財政の立て直しとともに成長を考えていかないことには、競争力を取り戻すことができない。そうした施策が欠けている面はある。金融の健全化を行う一方で、GDP(国内総生産)を引き上げる策の導入が必要だ。政府も国有企業の民営化やカルテルに対する策を講じる、あるいは労働市場に対しても賃金カットだけでなく、生産性を高めるような策も並行して採り入れるといった取り組みが必要だろう。
■80%以上の確率でユーロ崩壊はない
--ユーロ域内の金融機関の資本増強についてはどうお考えですか。
金融システム安定化の必要性ついてはコンセンサスが形成されていると思う。ただ、資本増強の額をめぐってはIMFが2000億ユーロ必要だと指摘しているのに対し、欧州の金融当局によれば、必要額は1060億ユーロにとどまる。1060億ユーロのうち、ギリシャの銀行は300億ユーロ、スペインが260億ユーロ、イタリアが150億ユーロという内訳だ。フランスやドイツの銀行に関しては、増資の必要性はさほど大きくないという。
銀行の自己資本比率を引き上げようとすれば、資本増強に踏み切る、あるいは資産を圧縮する、のいずれかが求められる。現時点で多くの銀行はおそらく後者の策へと傾いているのだろう。その結果、銀行の貸し付け能力が低下し、最終的におカネが回らなくなるのを各国政府は心配している。
一方、資本増資を行う場合、公的資金を注入するかどうかも議論の分かれるところ。個人的な見解としては、各銀行が配当カットや増資を株主に納得してもらうことや利益率向上などの努力を惜しんではいけないと思う。