貨物列車の「車軸折損」、本当の原因は何なのか? 不正追及の傍らで忘れ去られている技術の本質

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同プレスリリースでは当面の対応として、「検査結果データが基準値を超過していた輪軸を搭載した車両は運用停止(中略)可及的速やかに車軸の検査を実施します」とあるが、筆者は何を検査するのか疑問に思った。また同日の国交省プレスリリースには「安全に運転することができる状態であることが確認されるまで、使用を停止すること」とあるが、何をもって安全と判断するのかはまったく書かれていない。

ことの発端は車軸折損による脱線事故である。その再発防止が最優先であるはずなのに、不正行為の追及が最前面に出てきて、技術の本質が忘れ去られているように思えてならない。関係者が技術的に正しい認識を共有しない限り、作業上で決められた基準値を遵守するというだけでは、真の安全確保は達成できないと考える。

技術の本質を学ぶ姿勢

輪軸組立における締め代や圧入力について規定した日本産業規格「JIS-E 4504鉄道車両用輪軸-品質要求」が制定されたのは1970年である。その数値は旧日本国有鉄道規格JRSと同じだそうで、その数値の根拠は1949年に旧日本国有鉄道工作局が作成した仕様書に基づいているそうである。それまで現場任せだった数値を規格化した意味は大きいが、70年以上前に決めた数値で現在も管理が続いているということである。

前述したが、輪軸組立で重要なのは車輪が車軸をしっかり把握することで、その把握力は基本的に締め代で決まる。締め代は圧入部の内外径の差0.2~0.3mm程度であるため正確な測定は簡単でなく、組立作業の良否を管理する指標として圧入力が使われてきた。昨今の測定技術を使えば、把握力を直接測定することも可能かもしれない。今回の問題を契機に、圧入力の基準値や管理方法そのものを見直すべきと考える。

一連の報道に接すると、不正行為に対する“責任論”や“精神論”が前面に出てきて、基準値を逸脱したらどうなるかという“技術論”が見当たらない。筆者は基準値を下回った場合の問題については機械屋として説明できるが、輪軸組立作業に直接従事した経験がないので、上回った場合の問題についてはうまく説明できない。基準値や管理方法の見直しに当たっては、作業を熟知した経験者の意見を十分に聴くべきである。

日常的に事故が発生していた時代、関係者は事故現場を直接見て、否応なしに原因や予防策を考えざるを得なかった。しかし、現在のように事故の発生が稀になると(もちろんそれが目指してきたことなのだが)、関係者の学ぶ姿勢が欠如した場合、技術の本質を見失って適切な対応ができなくなる。今回の問題をどう結論付けるか、日本の鉄道技術が今後も発展を続けるか衰退するか、その岐路に立たされているように思う。

辻村 功 技術士(機械部門)

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つじむら いさお

1956年生まれ、早稲田大学理工学部卒。電機メーカーで鉄道車両用機器の設計業務に従事。外資系電機・ブレーキメーカーを経て独立。現在はインド国内で鉄道コンサルタントとして活躍中。

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