共同親権(親権含む民法改正案の概要はこちら)をめぐっては、当事者はもちろん、議員・行政・法律関係者なども推進(賛成)派と慎重(反対)派に分かれて論争を繰り広げてきました。その論争はマンガに描いた以外にもまだまだあります。
たとえば、推進派は「離婚時に親権をめぐる争いがなくなる」と主張し、慎重派は「共同親権合意を盾にされたら離婚できなくなる」と主張します。DV・虐待問題については、推進派は「単独親権下での再婚相手からの虐待を防げる」、慎重派は「共同親権だと、離婚してもDV・虐待や紛争が継続する」。育児については、推進派は「共同親権になれば同居親の育児の負担が減る」、慎重派は「普段から育児に関わっていない人に口だけ出されたら、かえって負担が増える」。養育費については、推進派は「共同親権のほうが養育費の支払い率は上がる」、慎重派は「共同親権になることで、養育費の金額が減って同居親の経済状況が悪化する可能性がある。世帯年収が合算されるので、高等教育就学支援や児童手当などの支給を受けられなくなる可能性も出てくる」。
このように、あらゆる対立は平行線で交わるところがありません。また、独身の女性からは「何かあった場合に逃げられなくなると思うと、結婚や出産を躊躇する」という声も聞きました。
共同親権は、紛争や暴力を継続させる可能性がある
私は以前からこの共同親権問題に注目していましたが、両者の意見が正反対すぎて長いこと混乱していました。でも、情報を整理するうちに、こう思うようになりました。「離婚後に父母間で子どもの養育について協力・協調して柔軟に対応できるなら賛成。ただ、そもそも離婚する夫婦は養育も含めていろんな点で対立している。多くの場合、協力自体が現実的には難しいのでは……?」
小川先生は、「裁判所に持ち込まれるような離婚案件では、多くの場合、何らかの暴力的要素が含まれていることが指摘されている。しかしDVや虐待の証明は容易ではないため、立証をあきらめる人も多い。その結果、面会交流の際に、子や同居親の命が奪われる事件まで発生している。早く別れたいからといって、安易に『共同親権』に合意して協議離婚を成立させると、紛争や暴力を継続させることになるので注意が必要」と当事者に警鐘を鳴らします。
次回以降は、さらに別居・離婚問題を深掘りしていきます。海外の親権事情や日本との違い、加害問題の具体的な対処法、日本と海外の元夫婦インタビューなどを紹介する予定です。
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