中国では近年、各地の地方政府が空飛ぶクルマを利用した地域レベルの空中交通サービスの導入や、関連産業の誘致・振興を模索している。そんな中、リリウムは2023年6月、広東省深圳市宝安区にアジア地域の統括会社を設立すると発表し、同区政府と覚書を交わした。
さらに同社は、深圳を本拠に広東省・香港・マカオを結ぶヘリコプター航路を運営している東部通用航空とも提携。リリウムの空飛ぶクルマが中国の航空安全当局の耐空証明(訳注:航空機の安全性について国の基準に適合しているという公的な証明)を取得することを前提に、東部通用航空が本格的な商用運航を手がける計画を発表していた。
独特の設計が敗因か
空飛ぶクルマの業界関係者の間には、リリウムの資金枯渇は同社が破産に至った表面上の理由に過ぎないという見方がある。事業が行き詰まった真の要因は、リリウムが選択した技術的アプローチが冒険的過ぎ、商用化の見通しが立たなかったことにあるというのだ。
リリウムが開発していた「リリウム・ジェット」は、機体前後の翼の上に小型の電動ダクテッドファンを30台も並べた独特の設計を採用。同社によれば、乗客6人と操縦士1人が搭乗可能で、航続距離は最大155マイル(約249キロメートル)に達するとしていた。
だが、これほど多数の電動ファンを稼働させると、離着陸時の電力消費量が大きくなる。そのため業界内では、既存の電池技術を利用する限り、リリウムが主張する航続距離は達成不能との分析が主流だったという。
(財新記者:方祖望)
※原文の配信は10月25日
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