公取委の異例対応で際立つ損保大手の悪しき体質 いまだにくすぶる500超のカルテル疑義事案

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理由は大きく2つに分けられる。

1つ目は、損保業界の法令順守意識の低さだ。

市場の9割近くを握り、日本を代表する金融機関にもかかわらず、「多岐にわたって数多くの違反行為をしており(中略)一従業員、一組織の問題ではなく、会社としての体質が問われる」(大胡局長)とまで糾弾されてしまうのが、損保業界の実情だ。

そもそも損保業界は、1990年代に損保各社で構成する日本機械保険連盟(1997年に解散)や、自動車の修理工賃(レバーレート)においてカルテル行為が認められたことで、公取委から勧告や警告を受けた経緯がある。

にもかかわらず、喉元を過ぎて熱さを忘れたかのように、損保大手4社は多岐にわたる分野でカルテルや談合を働いていた。

「付ける薬がないような状態」(金融庁幹部)

まさに「付ける薬がないような状態」(金融庁幹部)にあって、「法令順守の外形的な内部規律を改めるだけでなく、魂を入れて規律を守るという意識」(大胡局長)を持てというメッセージが、異例の対応には込められている。

2つ目の理由は、危機感の薄さだ。

東急をめぐるカルテル事案の発覚をきっかけに、各社が独禁法違反の疑義があるとして申告した案件は、合計で600先にも上る。そのすべてを公取委が審査し処分の有無を決めるのは、膨大な作業量と時間が必要になるため、ほぼ不可能だ。そのため、公取委は事案の悪質性などを踏まえて9つの案件を取り上げ、厳しい処分を下すことで一つの区切りをつけている。

損保大手4社などへの処分の一覧表(画像:公取委の公表資料)

一方で、損保側にしてみれば600もの疑義案件を申告しながら、たった9つの案件での処分にとどまった。

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