ムーディーズの日本に対する見方(年次報告)《ムーディーズの業界分析》

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トーマス・ バーン
SVP リージョナル・クレジット・オフィサー
ソブリン・リスク・グループ
ムーディーズ・シンガポール

ムーディーズは日本の格付けをAa3としており、その見通しを「安定的」としている。この見方は、多額の政府債務を十分維持できる日本の基礎的諸条件を反映している。

日本の多額の国内貯蓄、公的セクター以外の低水準のレバレッジが政府の赤字を賄う資金を提供しているほか、非常に多額な対外純資産および国外の負債依存度が低いことが世界の金融市場ショックに対する緩衝材となり、多額の所得収支の黒字が経常黒字を支えている。

これらの特徴から、日本政府は世界でも最も低い名目金利での資金調達が可能となっている。現在のリスク回避志向の強い世界の投資環境の中でも、日本国債の利回りは歴史的にも低水準となっている。国内の厚い資金調達基盤によって、ユーロ圏の危機からの悪影響が抑えられている。

ムーディーズが2011年8月に行った日本国債の格下げは、08年の世界的金融危機後の財政赤字および債務の増大を理由としたものであった。06年以降の頻繁な首相交代が、経済成長および債務抑制に必要な経済・財政改革を妨げてきたことに加え、11年3月11日の東日本大震災および原発事故が、09年の世界的景気後退からの回復を遅らせ、デフレを悪化させた。

日本の国内投資志向がすぐに低下することは考えにくい。これは多額の国内貯蓄、多額の対外純資産に基づくものだが、長期的にはリスクがあると見ており、政府の調達コストの転換点が訪れる可能性がある。

ムーディーズの格付け手法では、日本を以下のように分析しており、その概要を紹介する。
(1)経済力が「強い~非常に強い」
(2)制度の頑健性が「非常に強い」
(3)財政力が「中位」
(4)イベントリスクに対する感応度が「低い」
 以上から、日本の格付けレンジではAa1-Aa3となる。

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