三菱重工、知られざる「鉄道メーカー」の世界戦略 「架線レス」武器に新交通システムで営業攻勢

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車両は新開発の蓄電デバイスが供給する電力で走行する。駅に停車すると、客の乗降時間内という短時間内に駅で急速充電し、次の駅に向かうための電力を確保する。給電レールが不要になったことも建設コストやメンテナンスコストの削減につながる。駅間が長ければ長くなるほどより多くの電力が必要となり、短時間で十分な電力をチャージできないかもしれないが、都市部や空港のターミナル間であれば駅間も短く問題なさそうだ。

そして、「架線レスによって建設コストを抑えることができるとともに、メンテナンスコストも減ります」と担当者が説明する。これが架線レスの最大のメリットである。

また、同社のAGTは国内、海外ともに軌道の両側の壁に取り付けられたガイドレールに車両の案内輪を押し当て、これに沿って進む「側面案内方式」が多い。この場合はガイドレールが2本ということになるが、今回、中央下部に1本だけガイドレールを設ける「中央案内方式」も新たにラインナップに加えた。

同社では過去に中央案内方式の実績もあり、「海外のお客様から1本のガイドレールシステムのご要望があり、レパートリーに追加した」としている。中央案内方式は軌道を小型化できるメリットがある。架線レスと組み合わせればさらに効果は大きくなりそうだ。

軌道の小型化で採用広がるか

軌道の小型化はほかにもメリットがある。従来の同社のAGTは最小曲線半径が30mだったが、これをさらに小さくできるのだ。

通常、AGTは道路の上などに建設されることが多いため、道路のカーブに合わせてAGTの軌道もカーブする。つまり、よりきついカーブにも対応できるようになるということだ。ブースに掲げられたパネルには「22.5m」という表示があったが、「現在開発段階であり、来年春以降に予定している正式発表の際には数値変更の可能性がある」という。

三菱重工 イノトランス ブース
「プリズモ」を紹介するイノトランスの三菱重工ブースとスタッフ(記者撮影)

まだパンフレットもできあがっていない、誕生したばかりのシステムだけに、「営業活動はこれから」とのことだが、従来の鉄道よりも優れた点の多いシステムだけに、同社がAGTで実績をあげていない地域でも展開できる可能性がある。日立や川重といった伝統的な鉄道メーカーだけでなく、三菱重工の動向も要注目だ。

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大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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