三菱重工、知られざる「鉄道メーカー」の世界戦略 「架線レス」武器に新交通システムで営業攻勢
日本の鉄道メーカーというと、日立製作所、川崎重工業など車両製造を手掛けるメーカーか、三菱電機や日本信号など電機品を製造するメーカーがまず思い浮かぶが、三菱重工もかつては機関車や客車を製造していた。また、台湾の高速鉄道では日本連合7社のリーダーとして鉄道システムを構築している。
そんな同社は、自動案内軌条式旅客輸送システム(AGT : Automated Guideway Transit)の分野で大きな存在感を発揮している。
AGTとは、小型で軽量の車両がコンピューター制御による自動運転により専用軌道上にある「案内軌条」に従ってゴムタイヤで走行する交通システム。路面電車やバスでは輸送力が足りず、鉄道では輸送力が過多となる区間において、その中間の公共交通システムとして誕生した。日本では従来の鉄道と区別する形で新交通システムと呼ばれることが多い。
三菱重工が日本国内で手掛けたAGTの代表例としては東京臨海新交通臨海線「ゆりかもめ」、埼玉新都市交通伊奈線「ニューシャトル」などが挙げられる。海外では、香港、シンガポール、仁川、ドバイなど世界の主要国の空港において、ターミナル間の旅客輸送に用いられている。アメリカでもアトランタ、ワシントンDC、マイアミなど主要都市の空港で続々と採用されている。
「架線レス」の新システム
AGTは小型軽量車両を用いるため建設費を抑えることができ、ゴムタイヤを使用するため鉄輪と比べ急勾配でも走行できる。鉄道の勾配は最大でも2度くらいだが、AGTは10度の勾配でも走行可能である。しかも、ゴムタイヤは鉄輪よりも騒音レベルが小さいので住宅街でも走行できるという点も長所に加えられる。その反面、ゴムタイヤの摩耗が鉄輪よりも早いため、交換による維持費がかさむといったデメリットもある。
なお、AGTはバス以上鉄道未満の中規模輸送に適しているとされるが、マカオのLRTに導入された同社のAGTは東京メトロ丸ノ内線02系と同レベルの輸送力を持つ。逆に空港ターミナル間の旅客輸送に使われるAGTは都市を走るAGTと比べ定員が少ないが、コンパクトなニュータウンでの運行にも適している。
そして、「今回のイノトランスで初めて大々的に紹介します」と教えてくれたのが、「Prismo(プリズモ)」というシステムである。目玉技術は給電レールが不要となる「架線レス」の実現だ。
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