中国「一帯一路」は単なるファンタジーなのか 根深い供給過剰問題は簡単には解決しない
中国経済は過去数年にわたり急速に成長してきたが、最近では内需の鈍化が深刻で、過剰設備問題がにわかにクローズアップされている。
鉄鋼や石炭、セメント業界では特に供給過剰が著しく、これらセクターの生産能力は現在の需要水準を最大30%上回っているという。
したがって「一帯一路」構想は、中国が生産し過ぎたモノを売るための新たなマーケット開拓する、という重要な使命も帯びているのだ。
その効果はすでに表れ始めているようだ。監査会社PWCの試算によると、「一帯一路」構想が2013年に提唱されて以降、鉄道や発電所など2500億ドル以上のプロジェクトの契約がまとまったという。
中国セメント最大手の安徽海螺水泥<600585.SS>はインドネシア、ベトナム、ラオスで少なくとも6カ所のセメント工場を建設している。
鉄鋼生産量で中国国内トップ、河北省の省都である石家荘市では、今年1─7月の鉄鋼輸出額が50%急増し、365億元を記録した。
単なるファンタジー
徐州集団のようなもともと海外に進出していた企業は「一帯一路」の効果を実感しているのかもしれないが、それ以外の企業は足がかりを見つけられないでいるようだ。ロイターのインタビューに応じた河北省の鉄鋼メーカー8社は、供給過剰を背景とする価格下落という最大の問題を解決するほどの需要増は見られない、との見方を示している。
ある鉄鋼メーカーの幹部は「『一帯一路』の効果は多少はあるのかもしれないが、はっきりしたものではない」とし「対象となるマーケットは大きすぎる。今のところ単なるコンセプトでしかない」と語った。
一方で「一帯一路」には、国有企業改革という中国の政策目標を阻むリスクがあることも否定できない。「一帯一路」で最大の恩恵を受けるとみられるのが、まさに国有企業だからだ。地元証券会社の試算によると、これまでに最大1兆5000億元(約2350億ドル)の公的資金が「一帯一路」構想向けにコミットされており、その一部は中国主導で設立されたアジアインフラ投資銀行を通じて配分される見通し。
IHSのシニアエコノミスト、ブライアン・ジャクソン氏は、1兆5000億元という額は中国が世界金融危機時に行った景気刺激策の20分の1の規模だと指摘。過去の刺激策の結果生じた、過剰設備という構造問題を「一帯一路」で解決できると考えるのは「幻想」と述べた。
(Brenda Goh記者、Koh Gui Qing記者 翻訳:吉川彩 編集:橋本俊樹)
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