ヨーロッパは「鉄道テロ」とどう戦っているか 日本も備えをしなければ大変なことになる
犯行はネオ・ファシストの過激派組織によるもので、爆弾はスーツケースに入れられ、待合室に置かれていた。ボローニャ中央駅は改築が進められているが、1番線ホーム本屋に今も残る爆破事件によってできた床や壁にできた痕跡は、事件発生時刻の10時25分のまま止まった時計や追悼碑とともに保存されている。
1983年12月31日には、当時運行開始して間もなかった、フランスの高速列車TGVも標的となっている。国際テロリストとして世界に指名手配されていた、ベネズエラ人テロリストのカルロス・ザ・ジャッカルによる犯行で、2両目機関車寄りに設けられた荷物室に置かれていた爆弾が爆発、5人が死亡し50人以上が負傷している。この当時は、極左団体の過激派や、IRAによるテロ事件が多く発生した時代だった。
東海道新幹線の早期復旧は世界でも類を見ない
アメリカでの9・11以降では、アルカイーダなどイスラム過激派による犯行が増えてきている。2004年3月11日朝、スペインのマドリードで、市内の駅や走行中の列車内で次々と爆弾が爆発する同時多発テロが発生、朝のラッシュ時間帯に重なったこともあり、死者191名、負傷者も2000人以上に上ぼり、スペイン史上最悪のテロ事件となった。
翌2005年7月7日には、ロンドン市内でも同時多発テロが発生、市内を走行中の地下鉄車内や2階建てバスに仕掛けられた爆弾が爆発、56人が亡くなっているが、うち4人は実行犯で、自爆テロだった。
平和と言われる日本においても、こうしたテロやそれに類する事件というのは、決して無縁ではない。史上もっとも重大なテロ事件の一つとして語られる、1995年に発生した地下鉄サリン事件は、ラッシュ時の地下鉄を狙い、有毒ガスを散布するという過去に前例のない犯罪だった。
まだ記憶に新しい2015年6月30日には、神奈川県内を走行中だった東海道新幹線のぞみ号車内で、男が灯油を被って火を放ち、焼身自殺を図るという衝撃的な事件が発生した。テロ事件ではなかったが、灯油という可燃性物質を車内へ持ち込み、火を放つことができてしまったことで、図らずも新幹線がテロの標的になりうることを実証してしまった。
もっとも、こうした不測の事態に対する鉄道の脆弱性について語るのは簡単だが、不燃・難燃材を使用し防火対策に高い基準を設けている東海道新幹線の車両は、安全かつ速やかに停車し、延焼することなく鎮火して被害を最小限に食い止めただけでなく、その後車庫まで自力で移動して早期復旧に漕ぎつけた。これは、世界で類を見ない事例で、むしろ称賛されて良いのでは、と感じた。
鉄道におけるテロ対策は、どういった方法が考えられるのか。9・11の発生以降、欧州内でもテロ事件が多発した当時、警察や警備員の増員はもちろんだが、コインロッカーは使用中止にされ、ゴミ箱は撤去されるなど、人の目に触れにくい物や場所を極力排除することが優先された。
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