徹底比較!私鉄各社「通勤ライナー」の実力 攻める小田急、京急は朝上り列車を新設
TJライナーと同様に通勤車両を活用し、着席整理券による料金徴収を行う通勤ライナーとしては、京浜急行電鉄の「京急ウィング」がTJライナーより先に運行を開始した。「社内のあとは、車内で充電」というキャッチフレーズのもと、夕方にゆったり座れる列車として1992年4月16日に運転を開始した。
2ドア転換クロスシート車の2100形を使用し、平日夕方・夜に品川駅→京急久里浜駅・三崎口駅間の下り方面のみ運行されてきた。現行の下りの京急ウィングは、品川駅から乗車する場合のみ着席整理券が必要で、途中停車駅から乗車する場合は料金不要である。
一方、運行開始以来、朝上り方面の設定は実現していなかったが、9月9日に平日朝上り方面「モーニング・ウィング」の運行開始が正式に発表された。三浦海岸→品川・泉岳寺間で2016年12月7日の平日ダイヤ改正日から運行を開始する予定だ。途中停車駅は、横須賀中央、金沢文庫、上大岡で、品川まで途中下車不可である。着席整理券は300円で、1か月券5,500円も月単位にて発売される。同時に、夕方・夜の京急ウィングの着席整理券も200円から300円に変更される。
モーニング・ウィングの運行開始に当たって、京急線の朝上り方面の着席ニーズがどれほどあるのかが気になるところである。現状を確かめるべく、ある平日朝に京急久里浜駅06時24分発特急金沢文庫行き(列車番号:601B)(金沢文庫から快特品川行き)に品川駅まで乗車してみた。601Bは2100形使用列車である。京急久里浜駅出発時刻の約50分前から乗車位置に利用者が並び始め、同駅を満席で出発した。
平日朝の「着席ニーズ」は高い
その後、駅に停車するごとに大勢の乗車があり、混雑が増していった。若干の入れ替わりがあった横浜駅と京急川崎駅を除いて、着席はほぼ不可能な状況であった。始発駅で出発時刻のかなり前から利用者が並ぶ状況と、混雑の激しさから、平日朝の着席ニーズの高さがうかがえた。
こうした状況から都心へ通勤する途中駅の利用者にとって、モーニング・ウィングの運行開始はまさに朗報と言える。同列車の始発駅が三浦海岸駅となり、さらに京急久里浜駅を通過するダイヤとなるのは、三崎口駅と京急久里浜駅の利用者は始発列車を利用して着席できるとの判断があったものと考えられる。実際に三崎口駅のある利用者は「始発駅なので一般列車でも着席できる」と話す一方、上大岡駅のある利用者は「着席ニーズはかなりありそうで、満席になるのではないか」と話していた。
なお、現行では、京急ウィングを品川駅から運行するために、品川駅へ送り込む回送列車があるが、「沿線催事(花火大会等)において、臨時電車として運転する事例がある」(京浜急行電鉄総務部広報課)場合を除いて、営業扱いをしていない。東武東上本線のTJライナーのように、上り送り込み列車の営業化を実現することが、サービス向上につながる。
さらに京王電鉄も『京王グループ中期3カ年経営計画(2015年度〜2017年度)〜向上と拡大に向けて〜の策定について』の中で「有料座席列車導入の検討」を盛り込んだ。「現時点では全く未定の段階であり、詳細な検討はこれから」(京王電鉄広報部)ということであるが、首都圏にまた新たな有料着席列車が誕生することになりそうである。京王線も通勤・通学時間帯の混雑が激しく、着席ニーズは決して小さくないと予想されるだけに、一日も早い詳細な発表が待たれる。
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