党首討論会「和気あいあい」の雰囲気の背景事情 石破首相、野田代表が気遣い合う"仲の良さ"

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これに対し野田氏は「改革の“大玉”は企業・団体献金を禁止するかどうかで、まったく触れないのでは改革に値しない。また政策活動費については全部の野党が『廃止する』と言っており、廃止の方向で抜本的な政治資金規正法改正をすべきだ」と主張。馬場氏は「自民は『脱税裏金議員隠し』と言えるような対応をしている」、田村氏は「パーティー券購入も含めた企業・団体献金の禁止に踏み込まなければ、根本解決にはならない」と批判した。

また、野田氏からアベノミクスの功罪を問われた石破氏は「コストカット型の経済にしたのは良くなかった。(安倍政権で自民幹事長などを務めた)自分も責任を負わねばならない」と述べたうえで、実質賃金を上げるため、高付加価値型の経済を実現する考えを強調。

さらに、デフレ脱却の判断材料については「傾向として物価が下落しないことが複数月続いていくことは極めて重要で、個人消費が着実に上がっていくことが確認されないと脱却は難しい」との認識を示した。

石破、野田両氏の“仲の良さ”で対決ムード緩和も

こうして、2日間にわたった党首討論会は幕を閉じ、各党首は13日昼前からそれぞれ「重点選挙区」を中心に街頭演説などで支持を訴えるため、地方遊説に全力投球している。その一方で、記者クラブ主催の党首討論を振り返ると、控室での討論前の打ち合わせでも各党首が笑顔を絶やさず、相手の立場も気遣う場面が目立った。

相次いで控室に到着した各党首は、まず、討論会で最初に掲げる「ボード」にそれぞれ、「日本創生」(石破氏)、「政権交代」(野田氏)、「古い政治を打ち破れ」(馬場氏)、「徹底した政治改革」(石井氏)、「変える」(田村氏)、「若者をつぶすな」(玉木氏)、「失われた30年を取り戻す」(山本氏)と大書した。その際、互いの字を批評し合い、隣席の党首が書いたボードを参考にして書き直す党首もいるなど、和気あいあいの雰囲気が続いた。

その背景には、「『似た者同士』を自認し合う、石破、野田両氏の“仲の良さ”」(政治ジャーナリスト)があるとの見方が多い。確かに、控室でも対決ムードはまったくなく、討論会から退出する際に乗り合わせたエレベーターの中でも、「お互い年寄りだから、体調を崩さないようにしよう」などと労い合っていた。加えて、「他の党首達にも攻撃的な人物が少なく、しかも複数が討論会初登場組だったこともあって、これまでのようなぎすぎすした緊迫感はなかった」(記者クラブ関係者)のが実態だ。

もちろん、そうした各党首も街頭演説などでは「対決姿勢を前面に出す」(政界関係者)のは当然だ。ただ、「悪夢の民主党政権」「あんな人たちには負けられない」などと挑戦的な言辞を連発した故安倍晋三元首相とは対照的に、石破、野田両氏は「言葉の使い方が丁寧で、攻撃相手の立場にも配慮する人物」(政治ジャーナリスト)とみられている。このため「両党首の控え目な性格が自民と立憲民主の対決ムードを緩和させ、結果的に選挙戦の“痛み分け”につながる可能性もある」(選挙アナリスト)との“複眼的”な分析も出始めている。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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