「日本の観光が危うい」と懸念される2+1要素 観光学者が感じている「観光消滅」へ足音

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ホテルや旅館の人手不足も深刻で、部屋は空いているのに宿泊客を制限せざるをえない施設もあるという。

しかも、少子高齢化はさらに加速している。観光は、そこがどんなにすぐれた景勝地であっても、観光施設の運営や飲食店、土産物店の営業、バス/タクシーなどの交通機関に携わる多種多様な地域の人たちがいなければ、そこは観光地たりえない。

今はまだ「その気配」はなくても

一方で視点を変えると、収入や所得がなかなか上がらない中で、光熱費や食費の増加、あるいは円安による輸入品の価格高騰などで、旅行に出かける意欲がそがれている人も多い。まして、海外旅行は円安の影響で高嶺の花になりつつある。

前回、「通行無料も『トイレは有料』それどこの高速道路?」に記したように、筆者はこの夏、中央ヨーロッパを巡ったが、中国・台湾・韓国人観光客には大勢出会ったものの、日本人観光客を見ることはほとんどなかった。ウィーンやハルシュタット(ともにオーストリア)といった大観光地でさえ、そんな状況だった。

この夏のウィーンの旧市街。日本人をほとんど見かけない(筆者撮影)
この夏のウィーンの旧市街。日本人をほとんど見かけない(筆者撮影)

ひるがえって日本の高速道路の利用状況を見ると、走行台数や渋滞の発生頻度などは、例年とあまり変わらず、「観光消滅」などありえないように思うが、これも中長期的に見れば、人口減や観光需要の低迷が続くと、どうなるかわからない。

通勤通学や用務のほか、帰省も含めた広い意味で“観光の足”となる高速道路が、こうした観光への逆風を受け続けるとどうなっていくのか。環境変化や人手不足による影響を如実に感じたこの夏、より気がかりに思うようになったのであった。

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佐滝 剛弘 城西国際大学教授

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さたき よしひろ / Yoshihiro Sataki

1960年愛知県生まれ。東京大学教養学部教養学科(人文地理)卒業。NHK勤務を経て、高崎経済大学特任教授、京都光華女子大学教授を歴任し、現職。『旅する前の「世界遺産」』(文春新書)、『郵便局を訪ねて1万局』(光文社新書)、『日本のシルクロード――富岡製糸場と絹産業遺産群』(中公新書ラクレ)など。2019年7月に『観光公害』(祥伝社新書)を上梓。

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