「日本の観光が危うい」と懸念される2+1要素 観光学者が感じている「観光消滅」へ足音

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気象庁のデータを拾ったところ、インバウンドで賑わう京都では、今年6月から9月までの4カ月間で、最高気温が35度を超える猛暑日が54日もあった。ほぼ2カ月間、35度を超える暑さが続いたのである。

今年8月の京都駅烏丸口、市営バス乗り場はドライミストが噴霧されても暑かった(筆者撮影)
今年8月の京都駅烏丸口、市営バス乗り場はドライミストが噴霧されても暑かった(筆者撮影)

京都の観光地でもっとも人気が高いのは、当然ながらお寺と神社である。お寺なら、本堂や方丈など室内での観光だから、それほど暑くないだろうと思われるかもしれないが、風が通らないうえに冷房設備もない寺院が多いため、参拝中でも汗が噴き出してくるようなところがほとんどだ。

この夏は、あまりの暑さに京都の夏の風物詩である鴨川納涼床のランチ営業が、中止になったところも多かった。

いくら川沿いとはいえ、35度を超す炎天下で食事をするなど、観光客にとっても接客や配膳をする従業員にとっても、生命の危険に直結しかねないからである。

ランチ営業中止により閑散とした鴨川納涼床(筆者撮影)
ランチ営業中止により閑散とした鴨川納涼床(筆者撮影)

この8月の京都の主なホテルの客室稼働率は72.8%で、コロナ前の2019年に比べて10%以上の減少となっている(京都市観光協会調べ)。

8月は、南海トラフ地震の臨時情報が出たり、台風の影響で新幹線が何日も前から運休を決めたりするなど、旅行そのものをキャンセルした人が多かった影響もあるが、この夏の暑さは京都を歩く意欲を失せさせるに十分なインパクトがあったと思われる。

名産地で名産が食べられない事態にも

そのほか、海水浴客が全国的に減少しているのも、砂浜が暑すぎて海水浴どころではない状況があったようだし、暑さだけでなく日本近海の海水温の高まりにより、台風の勢力が衰えないまま日本に接近・上陸したり、思わぬ迷走をしたりするなど、安定した夏空が続くこれまでの夏とは、様相を異にしていることもたしかである。

次ページ2つ目は深刻な「人手不足」にある
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