中国鉄道メーカー、「水素車両」を積極展開の裏側 鉄道見本市、進出難航の「欧州向け」は出展せず
初期投資を抑えながら導入可能というのが売りだが、
いずれも中国市場向けの車両で、今回の展示のためだけに本国から輸送されたもので、同社の強い意気込みを感じる。とはいえ、同社が売り込みたいヨーロッパ市場向けの車両が出展されることはなかった。
CRRCは、前回2022年のイノトランスではヨーロッパ市場向け汎用型電気機関車「バイソン」を持ち込み展示した。ヨーロッパの機関車市場は、シーメンスの「ヴェクトロン」とアルストムの「TRAXX」という2車種が席巻しており、それ以外のメーカーは非常に小規模の生産にとどまっている。CRRCはそこへ殴り込みを掛けようという算段だった。
鉄道貨物輸送は、環境問題の後押しもあって今後ますます成長が見込まれていることに加え、各国で使われている機関車の老朽化に伴う代替需要や、国境での機関車交代が不要になる他国直通対応の複電圧機関車の導入が進んでおり、市場は常に活況を呈している。そこへ参入するという選択肢は的を射ているし、同社には機関車製造のノウハウもあるから、まったくの無茶ということはない。
だが、ヨーロッパ市場で運行するために必要な認証試験が、同社の市場参入に壁となっている。
逆風下で「技術力PR」に専念?
すでに何度も紹介している通り(2024年2月10日付記事「チェコに登場、欧州初『中国製電車』数々の問題点」など)、チェコで運行予定だった連接式電車「シリウス」はなかなか認証試験をクリアできず、ようやく本線走行の許可が下りたときには契約を切られ、辛うじて試運転に協力したレギオジェット社との間で短期間のリース契約が結ばれたという状況だ。
オーストリアの民間会社ウェストバーン向けの2階建て電車も、数年にわたって試運転が続けられているが、認証試験にパスしたというニュースは一向に入ってこない。
そして、ヨーロッパ市場で同社の信頼が揺らぎ始めたところへ追い打ちを掛けるように、ロシアによるウクライナ侵攻が始まった。
どちらかといえばロシア側に深い繋がりを持つ中国は、アルストムと提携して製造する予定だったベラルーシ向けの機関車についても、西側の経済制裁のあおりを受けて部品類の供給が絶たれたことから生産停止に追い込まれ、自社で代わりの部品を用意しなければならなくなった。
ヨーロッパ各国は、中国に対する警戒感をより一層強めており、今後しばらくはヨーロッパ市場で受注を獲得する可能性は薄くなるだろうと予想される。
その影響もあって、今回のイノトランスではあえて、ヨーロッパ市場向けの車両展示は行わず、純粋に自社の技術を世間に知ってもらおうという作戦に至ったと考えるのが自然だ。
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