JR貨物、不正を起こした「不適切な風土」の深層 データ不正が「現場の知恵」と化していた可能性
国交省が全鉄道事業者に車輪の緊急点検を指示した後、早速、JR北海道の旭川運転所所属の普通列車2両で圧入力値の「目安」超えのデータが見つかった。
JR東海でも在来線の11の車軸で最大圧入力値を超えていた。JR貨物と同様、超過した際の扱いについてルールがなかったことが目安超過の原因だった。
これらの2社は、圧入力値の波形データや「締め代」(車軸の太さと車輪の穴の寸法差。車輪の穴より車軸がわずかに太い)を管理しており、安全は確保されているとする。
波形データがなだらかであれば「かじり」のような傷は生じていないと判断され、締め代が管理されていれば「車輪はしっかり固定されている」ことになるのだという。
「超過」への意識は希薄
ただ、国交省は2社に対して「なぜ、締め代の管理ができていることなどで安全が確保されると言えるのか、さらに詳細を報告するよう求めている」(鉄道局技術企画課)。
JR貨物も「締め代」の管理は行っていた。同社は「締め代の管理だけで安全が確保できているとは考えていない」(広報部)とする。しかし、「車輪がきっちり締まって取り付けられてさえいれば問題ない」という認識が現場で共通していたようだ。
圧入力値の「超過」の危険性はあまり意識されていなかったことがうかがえる。
JR貨物において「不正」はむしろ「現場の知恵」であり、ゆがんだ技術継承が行われていたのではないか。こうした運用に疑問をもった社員はいなかったのか。また、疑問をもった社員が声をあげることができていたか。こうした点は今後の原因究明の中で重要なポイントになるだろう。
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