子どもの部活やスポーツはどこまで頑張らせる? 「勝利至上主義」の世界で生きる子を支えるには

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──子どものメンタルヘルスに悪影響を及ぼす、保護者の声かけや態度の例を教えてください。

小塩 靖崇
小塩 靖崇(おじお・やすたか)/国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所研究員。三重大学医学部看護学科を卒業し、病院での臨床を経た後、東京大学大学院教育学研究科にて博士号(教育学)を取得。専門は健康教育学。2017年から国立精神・神経医療研究センターにて、若者のメンタルヘルス教育と研究に従事。学校やスポーツでのメンタルヘルス教育プログラムの開発や学校教員向けの教科書執筆に携わる。アスリートと協働のメンタルヘルス啓発プロジェクト「よわいはつよいプロジェクト」に研究の観点から関与。著書『10代を支えるスポーツメンタルケアのはじめ方』(大和書房)は、スポーツに関わるすべての大人がメンタルヘルスを学ぶのに非常に役立つ内容となっている(写真は本人提供)

試合後や練習後の子どもに、「こうしたらよかったんじゃないの」「なんでこうしなかったの」などと質問攻めにするのはよくありません。スポーツに限らず、塾や習い事にも当てはまりますが、これは子どもに非常にプレッシャーがかかります。

ある子どもから聞いた話ですが、試合中は、他の誰より親の声が耳に入ってくるそうです。例えば、本当は左に行こうと思っていたのに、親の「右行け〜!」という声が聞こえると、つい右に動いてしまう。自分がプレーしているはずなのに、親の指示に従ってしまうのだというのです。

これが習慣化すると、子どもは自分で考えられなくなり、親の指示を待ったり、常に正解を探ってしまったりします。「子ども自身に考えさせたいので、親の声出しはさせない」というチームもあるほど。子どもへの期待値が高いほど口を出してしまうものですが、ぐっとこらえて、子どもが自ら話し出すのを待ちましょう。

と言いつつ、私自身も、バスケをする息子につい助言してしまうことがあります。自分の心身が健康であれば、ブレーキをかけて落ち着いて見られます。余裕がないときほど干渉してしまうのだと気付きました。保護者も指導者も、自分がキャパシティーオーバーになると、ストレスのはけ口として子どもに過剰な期待をかけてしまうことがあるようです。非常に大事なことなので、これは自戒を込めてお伝えします。

人と比べず、自分の目標に対する「負けず嫌い」に

──スポーツを通して子どもに「やり抜く力」や「負けず嫌いさ」「打たれ強さ」を身につけさせたい親もいると思います。

「やり抜く力」は、ぜひ複数の大人がサポートして、子どもと一緒に目標やプロセスを決めてあげてください。「負けず嫌いさ」は少し注意が必要で、子ども自身が決めたことに対して負けず嫌いであれば問題ないですが、他人と比較してどうかと考えるのが主になってしまうのは危ういと思います。

最後に「打たれ強さ」は、求めてしまうと弊害が出ます。「レジリエンス」という言葉がありますが、変形されたものが元の形に戻る復元力や弾力性という意味で、「回復」「抵抗」「再構成」の3つに分類されます。

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