株式市場にはびこる「配当」の思い込みと"横並び" アメリカの状況との比較から見えてくるもの

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他方、利益が大きく落ち込んだが、これは一時的だと企業が考えれば、従来と同じ金額の配当を続け、その結果、配当性向が100%を超えることも当然にある。

この配当性向の分布を日本市場とアメリカ市場とで調べてみた(下図)。形状が異なることは一目瞭然だろう。

日本の配当性向(2022年度)
日本の配当性向(2022年度)(出所:『京都大学人気講義の教授が教える 個別株の教科書』)
アメリカの配当性向(2023年11月)
アメリカの配当性向(2023年11月)(出所:『京都大学人気講義の教授が教える 個別株の教科書』)

違いの1つは、アメリカの場合、無配もしくはそれに近い企業が多いことである。アマゾンやグーグルの例で示したように、「配当をするよりも成長を」との意識が強い。

もう1つの違いとして、日本の場合、配当性向30%付近に多くの企業が集まっている。無配でない企業だけを取り出しても、日本は配当性向30%に集中している。

「隣の企業が30%の配当性向を目標としているから、わが社も30%にすればいい」との横並びの発想である。

これに対してアメリカの場合、より高い配当性向の企業が多い。「成長のための投資対象に乏しいのなら配当を」との意識の強い企業が多いからだろう。企業経営のことをより真剣に考えているともいえる。

トータルリターンが大きければ満足

株式を保有することは、企業のオーナーになることに等しい。企業が成長してくれさえすれば、とりあえずのところ配当を支払ってもらう必要がない。

京都大学人気講義の教授が教える 個別株の教科書
『京都大学人気講義の教授が教える 個別株の教科書』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

株主として、たとえば家を買うための資金が欲しくなれば、株式を売却して現金化すればいい。

株式を購入して以降、配当として支払ってもらった金額(インカムゲイン)の累計と、株式売却代金と当初の購入代金との差額(キャピタルゲイン)とを足した金額、すなわちインカムゲインとキャピタルゲインの合計額であるトータルリターンが十分に大きければ満足できる。

川北 英隆 京都大学名誉教授、京都大学成長戦略本部・証券投資研究教育部門 客員教授

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かわきた ひでたか / Hidetaka Kawakita

1950年奈良県生まれ。京都大学経済学部卒業後、1974年に日本生命保険に入社。

通商産業省(現在の経済産業省)派遣、ニッセイ基礎研究所金融研究部上席主任研究員、資金証券部長、取締役財務企画部長等を歴任。

2003年3月、日本生命保険を依願退職ののち本格的に学会に転じる。中央大学国際会計研究科特任教授、同志社大学政策学部教授、京都大学大学院経営管理研究部教授等をへて現在に至る。

この間、日本証券アナリスト協会証券アナリストジャーナル編集委員長、日本ファイナンス学会会長、日本取引所自主規制法人外部理事等を務める。

趣味は山歩き、辺境への旅行、植物の観察、証券市場の観察。

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