別の角度から考えてみよう。配当と企業成長との関係である。
同じような当期純利益を稼いでいる2つの企業があったとして、株主にとって現時点での配当の多いA社のほうが望ましいのか、配当の少ないB社のほうがいいのか。
単純化すると、配当の少ないB社は内部留保が大きいから、成長のために使える金額が大きい。そうすると成長率も高くなり、何年か先にはA社よりも企業規模が大きくなっている。結論は、「株主にとってB社のほうが好ましい」となる。
現実はこのように単純ではないものの、真実の一端である。
これに対して次の疑問が浮かぶ。
今の日本の株式市場において配当が好まれているが(高配当株に投資する投資信託が多く設定されているなど)、この現実からすれば、先ほどの質問に対して、「A社のほうが好ましい」と答えるのが正しいのではないのか。
この疑問に対しては簡単に回答できる。「アメリカの株式市場を見るのがいい」と。
アマゾン、グーグル(上場企業名はアルファベット)、メタ(旧フェイスブック)は無配もしくは2023年まで無配だった。このうちアルファベットとメタは2024年になり、配当を開始した。
赤字決算だから無配なのではなく、成長投資に資金が必要だからという理由で配当をしていなかった。
AI(人工知能)向けの半導体で急成長しているエヌビディアは無配ではないものの、ほとんど無配と同じ程度の配当しかしていない。しかし投資家に人気がある。成長への期待が高いからである。
アメリカと異なり、日本の株式市場において投資家が配当を好む理由には、次の3つがありえよう。
少し飛躍すると、日本企業は横並びで配当している。企業経営者には、当期純利益の30%を配当するのが正しいとの思い込みが強いようだ。
日本における配当性向「30%」の信仰
日本企業が「無配はダメ、当期純利益の30%を配当するのが正しい」と思い込んでいるとすれば、それは重大な間違いだ。内部留保と企業成長との関係を完全に見逃している。
そこで配当について、日本とアメリカの状況を具体的に示しておきたい。
「当期純利益に対する配当の割合」を「配当性向」と呼ぶ。アマゾンやグーグルの配当性向は0%を続けてきた。
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