"斜面の魔術師"作った「集合住宅」の衰えない人気 里山に溶け込む住宅、緑が豊かな部屋の内部

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ヒルサイド久末の1985年竣工当時の分譲価格を調べると、価格は3300万〜4200万円台とあった。

その時期はちょうど不動産バブルの時代とも重なる。一方でこの物件では、分譲価格はサラリーマンがローンを組める金額に設定した。

斜面地にあるがエレベーターはない

「ヒルサイド久末」には、エントランス、各住戸にアクセスする片廊下など、共用部が少ない。さらに、エレベーターもない。

斜面住宅のエレベーターの場合、設置にもメンテナンスにも費用が大きくかかる。家を買ったけれども、管理費が高くて住めない。そうならないようにエレベーターは外して設計されているという。竣工当時はやった投資用マンションとは大きく異なり、安く・長く住み続けることができる。

各住戸へは、階段や空中廊下を使ってアクセスする。

丘の上の住宅で暮らすことを考えれば、階段の上り下りは自然なことだが、年齢によっては負担に感じる人もいるかもしれない。

ヒルサイド久末 斜面住宅
両脇の緑を抜けて住戸に向かう空中廊下。周辺の木々によって季節を感じられるドラマチックな場所だ(写真:サムデザイン提供)

井出さんは「同じ斜面住宅で、エレベーターがないゆりが丘ヴィレッジでは、住人同士で住み替えが行われたこともあると聞きました。上の階で暮らしていた方が足を悪くされ、下の階の若い夫婦と住居を交換して住み続けていらっしゃるそうです。住宅を大切にしているからこその住まい方かもしれません」とも語る。

竣工から約40年の月日が流れ、家族構成が変わったことでリフォームをする住戸もある。設計時から、建築を支える骨組み部分をなるべく少なくするなど、大規模な修繕やリフォームを見越して作られている。これも長く住むために施された工夫の1つだ。

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