実際に、欧米など6カ国とイランの間で合意がなされると、ネタニヤフ首相をはじめネタニヤフ政権の閣僚全員が「バラク・オバマ大統領はイスラエルを裏切った」と非難したといいます。中東和平を仲介しようとするアメリカのオバマ政権は、右派色が強まったネタニヤフ政権に対し、警戒感と失望感を強めています。
興味深いことに、イランの核兵器開発問題に関しては、イランと同様にイスラエルの存在を認めていないサウジアラビアも、6カ国による合意に疑問を抱いています。
スンニ派とシーア派が争うシリアやイエメンで、イランと敵対するサウジアラビアは、今回の合意について否定的なコメントこそ出していませんが、「イランの核兵器開発の意図は、決定的な報復能力を手に入れて、アメリカによるイランへの攻撃を阻止することだけでなく、核兵器による威嚇で国境を越えた影響力を中東全域に及ぼそうとすることにある」と疑っているのです。
また、サウジアラビアを含めたペルシア湾岸の産油国は、潜在的に大きな生産力を持つイランの原油が自由に輸出されることになれば、すでにシェールオイルの出現で価格下落が著しい原油相場がさらに弱含みになることにも恐れを抱いています。イランが自由に経済活動をできるようになると、これらの産油国は財政上の苦難から抜け出せなくなってしまうのです。
イスラエルやサウジとの関係はどうなるのか
ところがアメリカが、これまで中東における盟友であったイスラエルやサウジアラビアとの関係を犠牲にしてもイランに接近しているのは、中東だけではなく世界のパワーバランスを考えているからです。
私の予想では、今後もオバマ政権はイランとの関係改善を進め、イスラエルやサウジアラビアに対しても、イランとの関係改善を促すように働きかけるはずです。
ネタニヤフ政権の基盤は盤石ではありません。国会120議席のうち、連立与党は61議席であり、辛うじて過半数を維持しているにすぎません。しかもイスラエル国内は不景気で、高い失業率や不動産価格の高騰などにより国民の不満が高まり、政権の支持率は不安定な状態にあります。
ネタニヤフ政権がイランへの制裁解除に反対し、核施設への先制武力攻撃を主張しているのも、それが要因になっています。国外の敵をことさら強調して、これを叩くことで求心力を高めようとしているのです。
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