「エンジニア冒険家」という新しい生き方 「旅」と「仕事」を両立させることは可能だ

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当時の南極基地には大工や電気関係、通信担当などテクニシャンが多かった。確かな技術を持って旅と仕事を両立している人たちを目の当たりにして、高橋氏は自分の生き方を決めた。

「エンジニア冒険家」の人生を実現するための必須スキルの1つ目は「学ぶ訓練ができていること」と書いた。そして、2つ目に高橋氏は「人との関係」を挙げる。

「一緒に働いている仲間や上司と良い関係を保つこと。アメリカでは転職する際に前の職場の上司に、どういう人だったかをヒアリングされます。その時に良い言葉を言ってもらえる関係を築いておくのが大事です」

2015年2月から6月までグリーンランドの基地で実験科学者として、さまざまな実験や観測を行った。写真はオーロラの下で気象観測中

具体例として挙げてくれたのが、グリーンランドでの経験だ。

標高3300mでブリザード(嵐)が吹き、最低温度マイナス60度以下になる極限環境で、6人が4か月間滞在し、科学者から依頼された実験や観測を行う。

「チームに僕と同じように博士号を持った人がいました。優秀だけど競争心むき出しで僕のアイデアを否定したり欠点を指摘したり。でも僕はあえてポジティブに笑顔で接するようにしました」

理不尽な態度にも冷静に接した結果、良好な関係を保つことができた。

また、退職時も喧嘩別れにならないよう誠意を尽くす。スペースX退職時には、上司からも慰留されたが、一緒に山登りした際「人生で仕事を一生懸命頑張るのもいいが、仕事以外にもたくさん楽しむことがある」と話し合ったことを思い出してもらったそうだ。

だから高橋氏は職探しに苦労しない。昔の指導教官や、大学時代の仲間(宇宙ベンチャーに知り合いがたくさんいる)、かつての同僚たちから仕事の声が掛かる。応募する際は、希望した職種に就けなくても、他の仕事を勧められれば柔軟に挑戦し、学び取っていく。

宇宙から地球を見返す目標に向けて

職を転々としながらも、宇宙を目指す高橋氏の方向性はぶれることがない。

「一番興味があることは宇宙から地球を見返すことです。大勢の人にそういう機会を持ってほしい。宇宙に限らず、裏山から自分の街を見るだけでも日ごろの問題が小さく感じられるし、あんな汚染された空気の中に住んでいたのかと気付くこともある。宇宙から地球を見ることは平和や環境について、また他の人種や動物を大事にしようと意識にもつながると思う」

一般人の宇宙旅行を実現するため、今後は宇宙企業で働くことも考えているという。もちろん旅も続ける。宇宙から見た時、地球のあちこちを知っている方が意味のある経験になるはずだから。

筆者は今まで多くの宇宙飛行士やエンジニアを取材してきたけれど、高橋氏のように知識も技術も持ちつつ、柔軟で軽やかな人は初めてだった。こういう人が、民間宇宙旅行時代の新しい扉を開いてくれるのだろう。

取材・文/林 公代 編集/長瀬光弘(東京ピストル) 写真/本人提供

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『エンジニアtype』編集部

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