機関投資家は、東芝への訴訟を検討している オリンパスには合計690億円を賠償請求

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オリンパスは第三者委員会の報告から3カ月後、虚偽有価証券報告書の嫌疑(金融商品取引法違反)で、証券取引等監視委員会によって東京地検に告発、起訴された。東芝についても、不正会計発覚の端緒が2月12日に証券監視委から受けた開示検査だったこともあり、今後、同委から処分が下される可能性はある。信託銀行は、損害額や訴訟コスト、勝訴の可能性などを考慮しつつ、訴訟の検討を進めることになるだろう。

4年前のオリンパス事件のときよりも、信託銀行や年金基金といった機関投資家がアクティブに動くべき背景もある。2014年2月から適用が始まった日本版スチュワードシップ・コードは、機関投資家が投資先企業との対話などを通じて問題改善や持続的成長を促すべき、と定めている。

機関投資家のチェックは、より厳しくなる

東芝問題の原因としては、取締役会による監督が機能していなかったこと、監査委員会による監査が機能していなかったことなど、ガバナンスの不全が指摘されている。

スチュワードシップ・コードの策定にかかわった野村総合研究所の堀江貞之・上席研究員は「ガバナンスが、外形を整えるだけになっていないか、実質的に機能しているか、機関投資家が一社一社確認する作業が絶対的に大事」と強調する。

ある年金基金の運用担当者は「投資先企業の監査委員会が機能しているか、横断的に調べることになるだろう」と見通す。東芝の監査委員会は委員長が社内取締役だった。社外取締役が望ましいと第三者委員会に指摘され、同様のことは東芝以外の会社についてもいえる。監査委員長に社内取締役が就いている企業は、機関投資家から質問を受けることになりそうだ。

スチュワードシップ・コードについての著書もある北川哲雄・青山学院大学教授は、「機関投資家は今後、社外取締役や社外監査役にも直接インタビューすることが必要になる」と見る。現在、機関投資家が会うのは、社長やIR担当役員であることが多い。しかし、東芝のような問題を回避するには、経営の監督や監査が十分に機能しているか、チェックすることが重要だ。

機関投資家が果たすべき役割は、東芝問題を機に、一段と増している。

「週刊東洋経済」2015年8月8ー15日号<3日発売>「核心リポート05」を転載)

福田 淳 東洋経済 記者

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ふくだ じゅん / Jun Fukuda

『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部などを経て編集局記者。

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