「時給10万円」でもお坊さんが喜べない事情 日本の寺には問題が山積みだ!

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兼務寺が増えているのは住職の後継者不足もある。曹洞宗の調査では、約35%が「後継者がいない」と回答している。この比率は調査のたびに上昇している。こうした傾向は曹洞宗だけでなく、あらゆる宗派に共通している。

過疎による檀家の減少、住職の後継ぎの不在、そして住職の高齢化―。数字からは、地方の寺がいくつもの課題に直面していることが実感できる。 週刊東洋経済8月8日-15日号(合併号)の特集「お寺とお墓の大問題」は、「お寺」「お葬式」「お墓」についてのさまざまな問題を取り上げている。

曹洞宗の寺院収入は平均564万円

では、寺の収入は実際どうだろうか。曹洞宗の寺院収入(法人収入)は、平均で564万円。この数字だけを見ると普通だと思われるかもしれないが、実は300万円以下が半分を占めている。もちろん豊かな寺もあって、1000万円以上の寺は12%あるものの、寺の多くはそれほど経済的に豊かではない。大都市にある寺の中には、利便性の高い場所に土地や賃貸ビルを所有しリッチな寺もあるが、そうした恵まれた所は全体から見れば少数派だ。

大雄山最乗寺の本堂(写真と本文は関係ありません)(写真:四季の旅人 / PIXTA)

葬式仏教という言葉は、仏教界を揶揄する言葉として使われるが、これは裏を返せば、多くの人が葬式以外に仏教や寺とのかかわりを持とうとしなくなったことの表れだ。

以前は、人々の暮らしと寺とのかかわりは深く、たとえば月忌参り(がっきまいり:月命日に僧侶に来てもらうこと)も広く行われていた。ところが都市部ではその風習は薄れつつある。長寿化や核家族化によって参列者が少人数にとどまることから、葬儀を簡略化したり、もはや通夜や告別式を行わず火葬のみの「直葬」にしたりする家もある。こうした社会全体の「非宗教化」は今後ますます強まっていくに違いない。

地方の人口が減ってその経済力が小さくなれば、寺も衰退する。そこに葬儀の簡略化に見られるように社会の非宗教化が進めば、さらに打撃となる。地方の過疎、顧客離れ、後継ぎ不足、顧客単価の減少。こうして見ると、日本の寺が抱える課題は、内需依存の地方にある中小零細企業とそっくりである。日本の寺は大きな危機に直面している。

長谷川 隆 東洋経済 記者

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はせがわ たかし / Takashi Hasegawa

『週刊東洋経済』編集長補佐

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